お伽話
続読ありがとうございます。
10話到達です。
これからもよろしくお願いします。
10.
「羊飼いと白金の獣、という話をご存知ですか?」
小さな子供を寝かしつける母親が我が子に歌い聞かせる短いお伽噺だ。
今は王子様とお姫様が登場する話がポピュラーだが、これは真逆をいく。
世の中に知られてない物語。
「知らないが…」
「ではそこから話しましょうか」
毎晩毎晩歌っていた母の語り口を思い出す。
「彼女はステラ、ただの羊飼いの娘」
ブランに毎晩毎晩歌い聞かせたこのお伽噺。
彼女はステラ、ただの羊飼いの娘。
昼も夜も野を駆け回った。
人の世界に抱かれる平凡な娘。
彼女は森を駆け回り、町を駆け回る。
彼女に寄り添うは一匹。
娘の友は黒の獣だけ。
彼女は獣の言葉に耳を傾ける。
今日は町が賑やかだった。
たくさんの人がいたの。
あんなに人がいたら、誰かいなくなっても分からないね。
獣はステラの傍でまどろむ。
彼女はふと空を見上げた。
青に黒が混ざり、星が瞬いていた。
彼女が草を踏みしめると、蝙蝠は恐れをなして走り去る。
彼女が抱きあげたのは闇に住む白金の獅子。
獅子は怪我で動けない。
ステラは闇の中、獅子は命を取り留めた。
それから、しばらくして若い獅子が野を駆け回るようになったという。
羊飼いの娘はとうとう昼の世界に戻らなかった。
「…意味不明な話でしょう?」
けれど、意味がある。
「これを子供に聞かせるための物語というのには平坦すぎるな」
物語とは娯楽の為に作られ、面白おかしく笑いを誘い、時には涙を誘う。
「普通ならば世の人に忘れられないように波乱万丈な話でも作るだろう」
賢い人だ。そして知っているのだ。
「本当の目的は世の人に伝えることではないからよ」
聞く人間は限られている。
「これは王族とフェリトリア家に語られる物語」
「…」
「殿下はこのような話をたくさん知ってる筈ですけどね」
「まぁな」
「若旦那、フェリトリア家の紋章は何かご存知ですか?」
「犬だったか」
「それが答えです」
獣の声は犬だ。
「私の血のニオイを嗅ぎつけた犬たちが殿下に居場所を告げ、暗殺者共を罠のある廊下に追いつめたんです。…お分かりいただけましたか?」
「ステラはフェリトリア家の祖先に当たり、黒の獣はフェリトリア家の育てている犬たち、闇に住む白金の獅子は王族。ちなみに、闇は欲望渦巻く王宮を指します」
そして、
「蝙蝠は臣下…傷ついた獅子というとクーデターだな」
「その通りです」
若い頃に覇王として名を馳せた初代王にも老いは当然訪れた。
長寿王とも呼ばれた彼の周りは世代交代が進み、初代王はクーデターにより玉座を追われる。
それを保護したのがステラ。
操り人形になった幼い王子を誰かが逃がし、保護する。
その王子は、民の中に隠され、時期を待つ。
逞しく、賢く成長した王子がクーデターを起こす。
3代目の王となった彼に仕え、忠誠心を示した祖先に姓と爵位が贈られたことがフェリトリア家の始まりだ。
「「家臣となった祖先は『私共は平民。過ぎたる力は人を腐らすと身をもって知っております』そう言って一度は辞退したが、」」
「俺の祖先である王は何度も食い下がった」
「で、祖先は根負けして『子爵』/『伯爵』の爵位を受け取った」
分かりずらいかと思いますが、一応このままで投稿です。
そのうち書き直すかもしれません。
アドバイスなどあればお願いします。