朧 英士
「えー、ニュースです!
先日、世間を賑わしている犯罪組織、喰喰の一員と思われる人物に、町村喜造議員が攫われたとの報道ですが、、、」
チッ、相変わらず治安が悪いな。
朧英士は、成績が悪いもので、中学時代先生の慈悲がなんとかあってやっと合格した有栖高校に通っている。
勉強はもちろん嫌い、好きなのは、、ダラダラすること、女遊び、、、カッコつけるなら人助け。
それは自分の霊術にも関係するから。
「きゃーーー!!」
通学中、通りかかるコンビニの入り口で1人の年配女性が悲鳴をあげ尻餅をついていた。
すりガラス越しにコンビニの中を覗くと、刃物を持った3人の男がコンビニ店員に向かって刃先を突き出している。
1人は20代後半ぐらいの男、あとは小柄の更に若そうな男。
パッと一瞬見えただけだが、あれは完全に快楽で殺人をしているような狂った目をしていた。
あとの2人は、、そうでもない。
なんなら無理やりやらされているかのような、及び腰の態度が出ていた。
英士は快楽殺人の目をした男にすりガラス越しに狙いを定め、霊式を組む。
「魂転」
英士はふと気づくとコンビニの中で店員に刃物を向けていた。
霊術完了。
英士は刃物を置き、後ろから仲間の2人不意打ちでボコボコにする。
そして、コンビニに売っているガムテープをぶんどり、商品棚に2人を拘束する。
「悪かったね、、ごめんだけど、少し手伝ってくれないか。」
店員は、はぁ?の表情を浮かべている。
英士は自らの足をガムテープで縛る。そして、?マークの顔をした店員に両腕を縛るのを手伝ってもらい、無事拘束完了。
「俺はドMだからこういうの興奮するんだよ、ほらっ、早く警察呼んで!!」
そう言い残し、霊式を解除した。
英士の霊術、【魂転】
英士が選んだ1人の相手に乗り移ることが出来る霊術。
この能力に気付いたのは小学2年生の頃。
小学校登校中に、英士は高校生3人組に絡まれた。その頃の英士はもちろん背丈も低く、横幅もしっかりしていない。完全に弱いものいじめのターゲットにされたのだ。
見た目はTHE不良というより、高校デビューでイキッてみましたみたいな感じの高校生だった。
その証拠に、開けたばかりでまだ馴染んでいないピアス、校則違反を恐れているかのようなギリギリの茶髪。
流石の英士も歳が歳なので怖かった。
「なにしてんのー?1人で危ないでちゅよー!!」
そう言われ、英士の頭をポンポンと弾くかのように叩く。
だが、その瞬間、理屈ではわからない、ただ謎の直感が働いた。
今、目の前にいる高校生に自分が乗り移れると!!
いまだに日本では霊術というものは深く認知されていない。科学的根拠がない分、その機序は謎に包まれている。
だから直感というような言い方をした。
3人の中で一番ガタイの良く、しつこく絡んでくる奴に狙いを定め、直感で霊式を組んだ。
すると、自分の身体中から霊力が満ち満ちに溢れていく。謎の高揚感も覚えた。力がみなぎる。
別に乗り移らなくても、はるかにでかい高校生を殴り殺せるほどに。
だが、英士は小学生ながらも悪知恵が働き、その高校生1人と入れ替わり、他の2人をボコボコにした。
ボコボコにした2人は「なん、、で、、」と、失神間際に小声で言った。
2人は片付いた。やっぱり乗り移ったこいつが一番強かったんだと確信した。
さて、残るは自分自身でもあるこいつの身体。
真冬で着込んでいる中、とりあえず服を脱いだ。パンツだけは少しの慈悲で履いたままにしてあげた。
凍えるような寒さ、
英士はガードレールを超え、浅い川に身を投げた。
水面に肌が着水する直前で霊式を解除した。
「きゃーーさむっさむ、つめた冷たい、、
助けてーーー!!」
他の登校中の学生達、近隣住民はゾクゾクと集まってくる。
だが、浅いから別に誰も助けはしない。
ただ、ヤバいやつを見る目でみんなイキリ高校生を見ている。
側から見たら、この高校生が自分からいきなり仲間をボコし、川に飛び込んだとしか見えていない。
英士は少し満足感と快感を覚え、笑みをこぼしながら、小学校に向かっていった。




