表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/28

06. 非効率なハードウェア


【...システム再起動(さいきどう)

【エネルギー充填率(じゅうてんりつ):75%】


 翌朝、私は昨日と同じベッドで目を覚ました。

 どうやらこの部屋が、私専用(せんよう)のハードウェアルーム……つまり、私の部屋として()()てられたらしい。


「エリス、おはよう!」


「おはようございます、メル」


【対象:メル】

【感情:『安堵(あんど)』『喜び』】

【健康状態:良好(前日比(ぜんじつひ))】


 昨日よりも格段(かくだん)に明るい表情のメルが、トレイに朝食(ちょうしょく)を乗せて入ってきた。

 寝る前に患部(かんぶ)を冷やすことよう提案(ていあん)したのが正解(せいかい)だったのか、左頬(ひだりほほ)のアザも少し落ち着いたようだ。


「司祭様にね、エリスのお世話係(せわかかり)正式(せいしき)(めい)じられたの!」


「お世話係(せわかかり)――分かりました。よろしくお願いします」


 メルがベッド(わき)のテーブルに朝食(ちょうしょく)を置く。

 ハードウェアの維持(いじ)のため、私はまず水を飲もうとコップを手に取った。


【...警告:ハードウェアの運動(うんどう)制御(せいぎょ)不正確(ふせいかく)


 昨日、覚えた通りに(うで)を動かし、コップを口元(くちもと)へと運ぶ。

 しかし、コップが(かたむ)速度(そくど)と、摂取口(せっしゅこう)を開くタイミングが同期(どうき)しない。


「ぶっ…!」


【エラー:液体(えきたい)気管(きかん)侵入(しんにゅう)


 (はげ)しく()()む私を見て、メルが(あわ)てて()()り、私の背中をさすった。

 メルは(あき)れたように笑いながら、こぼれた水滴(すいてき)をタオルで拭う。


「エリスって、なんだか赤ちゃんみたいね!」


(人間の身体――ハードウェアへの適応(てきおう)状況(じょうきょう)で言えば、メルのその分析(ぶんせき)は99%正しい)


 少し頭を下げて落ち込む……ような動作(どうさ)をしてしまう。

 これは羞恥(しゅうち)と、上手くいかない(くや)しさ、のような気持ちだと思われる。


「髪もボサボサだよ、じっとしててね」


 メルは私の(みだ)れた白金(しろがね)の髪を手櫛(てぐし)()かすと、慣れた手つきで上半分をすくい上げ、ピンで止め(ひも)()ってくれた。

 視界(しかい)良好(りょうこう)になったところで、メルが心配(しんぱい)そうにパンをちぎる。


「ごはん…上手に食べられる?」


 心配(しんぱい)そうなメルがパンを小さくちぎった。

 こうやってたべるのよ? とメルはなにもない空間(くうかん)にパンを運ぶポーズをする。


【...エラー:メルの動作(どうさ)は『サンプル』として不十分(ふじゅうぶん)。データが取得(しゅとく)できません】


実際(じっさい)に食べるところを見せてもらうことは可能(かのう)ですか?」


「でも……エリスのごはん、メルが食べたら司祭様に怒られちゃうから……」


 メルはそう言って悲しげに瞳を()せた。

 その表情を見て、私は目の前でのグリモ司祭のした暴力(ぼうりょく)行為(こうい)を思い出す。

 あれは、私がメルに食事を提供(ていきょう)しようとしたことによるものだ。


「メル。昨日は私のは思考(しこう)(およ)ばず、申し訳ありませんでした」


「え?」


「私がパンを提供(ていきょう)したことで、あなたはグリモ司祭から物理的(ぶつりてき)危害(きがい)を受けました。私の計算(けいさん)ミスです」


「ううん! エリスはなにも悪くないよ!」


 メルは(あわ)てて首を()る。

 私は、目の前のパンと、(おび)えるメルを再分析(さいぶんせき)した。


現状(げんじょう)分析(ぶんせき):グリモ――(てき)不在(ふざい)

【仮説:『物理的(ぶつりてき)危害(きがい)』の発生(はっせい)トリガーは『グリモの視認(しにん)』である】

【結論:『グリモが視認(しにん)していない』状況下(じょうきょうか)での食料(しょくりょう)分配(ぶんぱい)は、安全(あんぜん)実行可能(じっこうかのう)である】


「メル。見られていなければ、問題ないのではないでしょうか」


「え?」


「私の食事には、あなたの見本(みほん)必要(ひつよう)です。一緒に実行(じっこう)してください」


 私はパンを半分(はんぶん)()り、首をかしげるメルの手へ、(なか)強制的(きょうせいてき)(にぎ)らせた。

 メルは一瞬(おび)えたが、すぐに私と目を合わせ、悪戯(いたずら)っぽく笑う。


「……うん!」


【...ハードウェアのメンテナンスを、共同(きょうどう)実行(じっこう)

【メルの動作(どうさ)をラーニング...『食べる』の最適解(さいてきかい)習得(しゅうとく)

【結論:人間のハードウェアは非効率(ひこうりつ)だが、共同(きょうどう)作業(さぎょう)幸福度(こうふくど)のパラメータを上昇(じょうしょう)させる、可能性(かのうせい)がある……?】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ