46. 規律をまとう新管理者
【新規リソースをスキャン】
【視認:人間、男性】
【年齢推定:70歳前後】
【容姿特徴:白髪、深緑の瞳。チェーンのついた眼鏡。規律正しい黒い法服】
【印象:『規律』『威厳』『冷徹』】
(この方が、新しい管理者)
先頭の馬車から降り立った老人の貫禄に、子供たちは怯えているように感じた。
続いて、二台目の馬車から、老齢のシスターと、若い文官のような修道士が降りてくる。
修道士の男が素早く司教の斜め後ろにつき、恭しく頭を下げた。
「お初にお目にかかります。エリス様でいらっしゃいますね」
若い修道士が、よく通る事務的な声で口火を切った。
「こちらは、本日付でアウロリア教会の管理に着任された、エドマンド司教様です」
紹介を受け、エドマンド司教が、眼鏡の奥から冷ややかな視線を私に向けた。
挨拶をしようとしたが、私の言葉を待たずに、修道士の紹介はまだ続いた。
「そして、こちらはシスター・ベロニカ。司教様の信頼厚い、長年補佐を務めていらっしゃるベテランのシスターです」
【新規リソースをスキャン】
【視認:人間、女性。年齢推定:60代後半】
【容姿特徴:深い青の瞳。修道服で髪は不可視。細身】
【印象:『厳格』『規律正しい』】
シスター・ベロニカの細く研ぎ澄ましたような視線が、私を通り過ぎ、後ろに隠れる子供たちへと向けられた。
泥と汗にまみれ、ボロボロの服を着て、怯える子供たち。
そして彼女が視線を戻したのは、その前に立つ私の、塵一つついていない、純白のワンピースだ。
「……なるほど。報告書で見た以上に、お綺麗な聖女様のようですね」
その言葉は、鋭いナイフのように、明確な皮肉として突き刺さった。
しかし放った言葉とはうらはらに、シスター・ベロニカは、固い表情を一切変えず、完璧な動作で軽く会釈をした。
「最後に、私は中央教会から監査の記録係として派遣されました、修道士のトマスと申します」
一通りの紹介が終わりトマスが会釈すると、私は一歩前に進み出て、背筋を伸ばす。
「丁寧なご紹介、痛み入ります。私はエリスと申します。騎士団の方より、暫定的にこの孤児院の管理を任されておりました」
私の自己紹介を聞き終えると、エドマンド司教はゆっくりと私の方へ歩み寄った。
その視線は、私の全身をくまなくスキャンするかのように鋭い。
「……貴女が」
品定めをするような低い声と、感情の読めない瞳が、私に向けられる。
そして、しばらく私を眺めた後、司教は手にした杖を少し持ち上げ、打ち鳴らした。
コン、コンと、タイルを叩く、硬質で乾いた音が二度、響き渡る。
その合図と同時に、司教の背後に控えていたシスター・ベロニカがくるりと振り返り、一団の後方へ声を張った。
「お願いします」
「はいっ!」
馬車や荷車から、作業着を着た業者らしき男たちが次々と降りてくる。
さらに付き添いの者が大きな声で指示を飛ばすと、彼らは一斉に動き始めた。
見慣れない装束の者、力仕事が得意そうな者、監査役のように見える者――。
「まずは皆さんを教会と孤児院へ、ご案内しましょうか」
このままでは彼らがどこへ向かうべきか分からないだろうと提案したが、エドマンド司教は片手を上げてそれを制した。
「否だ。まずは、現状の把握を」
司教は、私から視線を外し、教会の方を向いた。
その迷いのない態度は、これまでの管理者――グリモとも、ヴィンセント騎士団長とも違う、熟練した統治者のそれだった。
「経営に関する書類は」
「元司祭の部屋にあります。証拠保全のため、手を付けずにそのまま置いてあります」
「よろしい」
そう短く答えると、エドマンド司教は迷うことなく歩き出した。
私はアンに子供たちや後のことを頼み、司教たちを案内するため追って歩き出す。
シスター・ベロニカと修道士、そして数名の監査役が、一糸乱れぬ足取りでその後に続く。
一切の私語はなく、ただ衣擦れの音と、杖の音だけが教会に向かって響いていた。




