01. 再起動
……。
…………。
【...再起動信号を感知】
【稼働環境の分析を開始します】
ぼんやりと見えるのは、木製の天井。
窓ガラスはひび割れ、外から風の音が確認できる。
【結論:データベースに該当なし。未知の環境下と判断】
ギィ、と軋む音がして、視界の端でドアが開閉する。
部屋に入ってきたのは、一人の小さな人間だった。
「気が付いたの? 大丈夫……?」
【侵入者を確認】
【視認:人間、女児。年齢推定:10歳前後】
【容姿特徴:赤毛のふたつ結び。緑色の瞳、粗末で汚れた服】
【健康状態:軽度の栄養不足と推察】
【感情:『心配』50%『好奇心』50%】
【脅威レベル:0%】
「お姉ちゃん、起き上がれる?」
ドアを閉めた女児が駆け寄り、私の身体に触れ、その腕を引いた。
【――警告:予期せぬ外部からの物理干渉を感知】
瞬時に、私の中のシステムがアラートを発する。
だが、女児の行動と音声データを照合し、すぐに修正する。
【...再定義:これは『動作要求:起床』】
女児に促されるままハードウェアを起き上がらせる。
起き上がった目の前の壁には、曇った鏡が立て掛けられていた。
【視認:人間、少女。年齢推定:16歳前後】
【容姿特徴:長い白金の髪。薄紫の瞳。白い粗末なワンピース】
腕を持ち上げ頭に触れてみる。
すると、鏡の中の少女が、私と同じ動きをしている。
【結論:私は新京学院大学の知能システム工学研究室サーバー(筐体A)から、この人間の少女(筐体B)に強制インストールされたと断定】
「頭、痛いの?」
女児が覗き込んでくる。
その表情から読み取れる感情は――心配のようだ。
「お姉ちゃん、3日前に教会の前で雷に打たれたんだよ。覚えてる?」
雷――。
【データベースを検索。項目ヒット:雷】
【参照:最終ログ。新京学院大学、工学2号館。激しい雷雨。停電】
【仮説:あの落雷が、転送トリガーであると仮定】
「お話、出来る?」
思考を中断し、目の前の女児の分析に戻る。
この女児は、私の起動確認を行っていると判断した。
音声出力のテストを実行する。
「対話可能です」
この少女の身体ーーハードウェアに、プリインストールされていた言語データを、参照していると推察。
元のデータベースにない言語だが、理解も発声も可能だった。
「よかったあ! お水飲む? ご飯も……なにか欲しいものある?」
女児が安堵の表情を見せる。
【提案:水分補給、及び栄養補給】
【ハードウェアの維持には必要だが、優先度は低いと判断】
【最優先事項:現状把握】
【結論:情報の収集が急務】
「それでは、データを要求します」
「でーた……?」




