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聖女大戦   ~聖女をやめたので地球に転移して無双します~  作者: 日々野 新


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第18話 二つの会議

 ――会議が始まって三時間以上が経過していた。

 ソウジは時間を気にしながら、円卓の上に地図を広げた。


「この地域の周辺地図だ。商会の所有している土地を黒いい線で囲ってある」

 所有地は海岸線から山岳部まで続く広大な面積だが、そのほとんどは山林のようだ。


「今、俺達がいるのがこの赤丸の所で、商会や教団で使用している部分は青線で囲ってある。現状、実際に使用しているのは全体の20%にも満たない」


「ここから北に少し行った処にある小さな山。その頂上に古い別荘がある」

「リンネはネフィアと一緒に、その建物を訓練の拠点にしてほしい」

「保護した子供たちも、そこに住めるように考えて修復してくれ」


「分かりました。禁止している魔法を、ここで訓練するわけにはいかないですよね」

 リンネはその意味をすぐに理解した。


「ネフィアには、リンネの訓練を見て、二つの魔法の使い方を教えてやってほしい」

「実際、俺よりは数倍、ネフィアの方が魔力があるし、使い方もうまい」


「そんな、もし本当にネフィアさんが教えてくれるなら、こんなに嬉しいことはありません」

 ネフィアと言えば、ウォルハイト王国でも五本の指に入る魔法使いで、何より、生きながら伝説になっている。大いなる青の魔女の曾孫だ。


「これからは、ネフィアさんの事を師匠と呼ばせていただきます」

 リンネは期待に胸を膨らませた。


「師匠はソウジでしょ……私は、先輩ぐらいでいいわよ」

「ほら……リンネちゃん言ってみて」


「……せんぱ……い」

「ネフィア……先輩」

 リンネは何だか恥ずかしそうに、顔を赤らめながらいった。


「ソウジ、山の上で訓練するなら、その拠点、私も使わせてもらうからね」

「私のしている研究も、商会の研究所じゃ堂々とできないやつだからさ」


「ああ、もちろん構わない。良ければその研究もリンネに手伝わせてやってくれ」

「ネフィア先輩、よろしくお願いします」

 リンネは深々と頭を下げた。


「リンネちゃん、こちらこそよろしくね」

「ただ私も、簡単な上級魔法なら一人で使えたけど、こっちの世界じゃまだ成功してないの」

「特に、三重の魔法陣についてはまったく知識がないんだ」

「だから、一緒に勉強していきましょ」


「上級魔法が使えるぐらい力がついたら、コツをアリア様に教えてもらいましょう」

 ネフィアはアリアの方を見ながら言った。


 するとソウジは少し顔をしかめて、首を振った。

「アリアは深く考えずに魔法を使っているから、誰かに教えるのは適してないと思う」

 その言葉を聞いてアリアは不満げに頬を膨らませる。


「でも、三重の魔法陣を一人で発動する感覚はアリア様にしかわからないでしょ」


「だから私たちがその段階まで来た時に、教えてほしいの」


「それはいいですけど、その前にネフィアさんにお願いがあります」


「何ですか、アリア様」


「ですから、その……私はもう聖女ではないので、アリア様というのは止めて、昔のようにもっと気安く呼んでもらえないですか」


「五年間もそう呼んで来たから、すぐには変えられないのよ」

「ソウジだって公の場所ではアリア様って呼んでたのに、変わり身が早すぎるわ」

 ネフィアは意地悪そうにソウジの方を見る。


「そこを何とかお願いします」


「それじゃ、昔に戻してアリアちゃんでいい」

「私ももう二十歳なのでアリアちゃんはちょっと」


「うーん、それじゃ……呼び捨てになっちゃうけど、アリアでもいいかな?」

「はい、それでお願いします」

 アリアはネフィアを見つめて、ニコッと笑った。


 ドレアスからの報告で、イルサレム軍の地上進攻は延期になったそうだ。

 だから、あしたに備えて今日はゆっくり休んでくれ。


「お兄様、分かりました」

「それにしても、ドレアス様って本当に優秀なんですね」


「だから、あいつに様は付けなくていい」

「どうしてですか?」

「何故か分からないが、とにかく腹が立つんだ」

 そう言ってソウジは席を立った。


 ――その頃。

 イルサレム軍の参謀本部では、昨日の事件について会議を行っていた。


「兵器設計部署からの報告では、落雷の直撃を受けてもミサイルが爆発することはあり得ないそうです。整備担当部署からも、製造年も新しく、整備にも問題はなかったと連絡が来ています」


「また、その時間帯に上空を飛んでいた軍事衛星は無かったそうです」


「偽装している可能性がある。他の衛星も全部調べろ」


「もし衛星が飛んでいたとしても、あの事故については説明がつきません」

「ミサイルの爆発が攻撃によるものだとしたら、今までにない新兵器が存在することになる」


「そんな新兵器があったとしても、開発できる国は数か国しかない」

「いや、今の段階であんな兵器を開発できる国はない」

「世界最大の軍事大国カナメリアでも無理だろう」

「何よりカナメリアはわが国一番の同盟国だ」


「では、何だったのだ。あの光は」

「本当に神の雷だというのか」


 会議は荒れて、少しも前に進まない。

 そんな時、参謀総長の前の電話が鳴った。

 この番号を知っているのは、政府と軍を合わせても数人しかいない。


 参謀総長は自分で受話器を取った。

 数分間、会話が続く。 

 そして、彼は受話器を置いた。


 大統領から直接指示があった。

 この件は、大統領直属の諜報機関が直接調査するそうだ。


「我々は手を出すなということですか?」


「そういうことになるな。これからは、国家保安庁も軍事情報部も彼らの指揮下に入る」


「最近の大統領は何を考えているんだ」


「権力と情報を全て掌握する。まるで独裁者のようだ」


 参謀総長は押し黙ったまま、テーブルを拳でたたいた。

 大統領を批判していた軍の高官たちはハッとして、口を閉じる。


(この部屋にも盗聴器が仕掛けられてるかもしれない。余計なことは言うなということか)

 一瞬で、会議室は静まり返る。


 その様子を見て、参謀総長は緊張をほぐす様に笑っていった。

「何かわかれば、我々にも報告するそうだ。それまで、待とうじゃないか」


 イルサレム軍参謀本部の会議は、何の進展もないままに、終わった。



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