第16話 フェイク動画の拡散
――ソウジはアリアの動画をプロジェクターに映し出した。
そのコメント欄には……
「フェイク動画消えろ!」
「これは、AI生成動画です」
炎上気味に、動画をフェイクだと印象づけるコメントが並んでいた。
同じ場面を別の角度から移した動画も多く挙げられている。
ミサイルが空中で爆発せず、そのまま街へ落ち、多くの建物を破壊して行く動画や、空の上を小さな影が薄い光を帯びて飛んでいく様子をズームアップして、大きな鳥が飛んで行くのが映し出されていた。
「フェイク動画の作り方」
そう書かれたコメントのリンク先には、AIを使った詳しい動画作成方法があり、そこからもフェイク動画が無数にリンクされ、アリアが撮られた本物の動画にもつながっていた。
「動画のフェイク化……この対応をしてからは、拡散も沈静化しつつある」
ソウジはプロジェクターの画面を切り替えながら、対応が上手くいっていることを伝える。
「……ドレアス様は本当に優秀なのですね」
アリアはドレアスが二度も自分を救ってくれたことが嬉しくて、顔が少しだけ赤くなるのを感じた。
「おっおい、あんな奴にきゅんとしてんじゃない」
「あいつが俺の弟になるなんて、死んでもごめんだからな」
ソウジは慌てて一本のフェイク動画をアリアに見せた。
「この動画を見てみろ。お前、猿にされてるぞ!」
近づく戦車を前に、修道服を着た猿が、砂嵐の中で子供を抱いている。
「お兄様……なんて幼稚な! これではドレアス様に、コテンパンにやられる分けです!」
アリアは顔をさらに赤くして、ソウジに悪態をついた。
「……それにしても」
「ドレアス様は何故……ズマの兵士をしているのですか?」
「あの地域の潜入調査だ……」
「イルサレム政府内部の調査や、ズマに捕らえられた人質の救出などをしている」
「今日からは、アリアとカインにもイルサレム政府の内部調査を手伝ってもらいたい」
ソウジはそう言いながらアリアとカインに視線を向けた。
「イルサレム軍ではなく政府の内部調査……」
「具体的には、何をすればいいのですか?」
アリアは思考を巡らせるように、少しだけ視線を伏せてソウジに訪ねた。
「詳しいことは、向こうでドレアスに聞いてくれ」
「調査の結果次第では、この世界への干渉を教団が認めるかも知れない」
「そのための装備も用意してある」
ソウジは商会の職員に連絡して、大きなスーツケースを三つ持ってこさせた。
一つ目のスーツケースを開けると、大きな木箱と何着かの衣類が入っていた。
……イルサレム軍とズマの軍服、それにザルク自治区で着用されている普段着や民族衣装。
「状況に応じてこれらの衣類を身に着けるが、基本的には隠密魔法を使って行動してもらう」
ソウジは話を続けながら、スーツケースの中の半分を占めていた木箱を開く。
中からは、魔法石を埋め込んだブレスレットにポーチ、そして何本もの小さな瓶と小型の拳銃に弾薬が出てきた。
見覚えのあるポーチをアリアは手に取り言った。
「これは、ドレアス様持っていた空間拡張型の魔法ポーチ」
「それに……何の魔法石だろう?」
「まずは、空間拡張のポーチ、地球で使用することを想定して商会が新たに開発したものだ」
「裏側にマナドロップを入れるポケットが六個あり、一個につき約六時間、ポーチを使える」
「六個のポケット全てにマナドロップを入れると、一日半使えるということですか?」
魔道具好きのカインが少年のように、目をキラキラさせて質問する。
「そうゆうことだ」
「ドロップを入れ忘れて魔力が無くなると、内部空間が縮小して荷物が溢れ出す」
「ポーチが破裂するから、使わないときは中の荷物を必ず出しておいてくれ」
「マナドロップ無しでは使えないのですか?」
「それから……入れられる荷物の量はどれくらいです?」
カインの質問が止まらない。
「マナドロップの代わりに、自分の魔力を供給することも出来るが、地球ではその魔力自体がマナドロップ経由になる」
「アリア以外は効率が悪くなるから、やらない方がいい」
「入れられる量は、あの大型スーツケース三個分ぐらいだ。中は三つに区切られていて、それぞれ別のものを入れられるが、一か所に全部の容量分を入れることも出来る」
ソウジは脇に置いた三つのスーツケースを指し示した。
「持ち主認証をすると、持ち主しか使用できなくなり、無くした時も他の人にはただのポーチにしか見えなくなるから安心だ」
「ただその場合……魔力が切れた時は大変な事になるから注意してくれ」
「次に魔法石のブレスレット、これは身隠しの魔法石が埋め込まれていて、隠遁魔法が発動できる」
「これもマナドロップで作動できるが、最大使用時間は二時間までだ」
「持ち主認証をすると同じように、持ち主しか使用できなくなる」
「最後にこの小瓶だが、これが一番重要なアイテムになる」
小さなガラスの小瓶を指でつまみ、ソウジは説明を始めた。
「この瓶の中には、鉄を瞬間的に酸化させる細菌が入っている」
「今後はこいつを使い、兵器を使用不能にする」
「そして……戦闘を未然に防いでいくようにしたい」
ソウジは懐から拳銃を取り出し、瓶のふたを開けて土色の粉を振りかけた。
拳銃に触れると粉は化学反応したようにグツグツと泡立ち……
弾けてはまた生まれて、数秒後には銃全体を包み込んでいた。
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