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聖女大戦   ~聖女をやめたので地球に転移して無双します~  作者: 日々野 新


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第14話 子供たちの未来

 ――「お前と子供たちが無事でよかった」


「……お兄様」


 思わぬ優しい言葉に、アリアは感情が溢れてソウジに抱きついた。

 その瞬間、修道服に染みついた砂埃が――昨日よりもさらにひどく、ボワッと舞い上がる

 どこかで見た光景にリンネは笑いをこらえながら、二人に洗浄魔法をかけた。


「ソウジお兄様……」

「イルサレム軍の攻撃予定は、明日からのはず……なのに今日、どうしてあんな攻撃を?」


「報復だろう。攻撃を早めたんだ」

 ソウジは淡々と答え、スマホを持ち上げた。

「理由は、この映像を見れば分かる」


 そして、新しい動画の再生を始めた。

「これは、ザルク自治区を実効支配するズマが流した動画だ」


 椅子に拘束されたイルサレム軍兵士の頭に、覆面をしたズマの兵士が拳銃を押し当てている。


「……やめろ!やめてくれ!!」

 絶叫する兵士は何本かの指が欠損し、残った指には爪がなかった。

 そして、そこからにじみ出た血がしたたり落ち、床を赤く染めている。


 覆面をしたズマの兵士は何もいわず、引き金を引いた。

「バンッ!」

 断末魔の叫びもなく、兵士は首をうなだれた。


「ひどい……っ」

「なんて残虐なことを……」

 アリアの胃の奥が、きりきりと痛んだ。

 吐き気をこらえ、掌を腹に当てる。


「アリアこれは戦争だ、お互いが正義を叫び、残虐な戦いを繰り返している」

「だから……イルサレムとズマ、どちらかの軍に肩入れしてはいけない」


 ソウジの心配をよそにアリアはきっぱりと答えた。

「私は、命を危険にさらされ、飢えや貧困に苦しむ人を救うだけです」


「二日で二人か……そうやって救ってくるのはいいが、数日で部屋がいっぱいになりそうだな」


「それなら私の部屋も提供します」

 リンネが言葉を挟むが、「そういう事じゃない」ソウジは首を振り、話を続けた。


「この子たちをどうするつもりか知らないが、ちゃんと子供たちの話を聞いて、親や親戚がいる子やザルク自治区に戻りたい子は、帰してやることも考えてくれ」


「それから、神聖ルクレシア教や魔法を教えたり、触れさせるのは控えてほしい」


「どうしてですか?」

 リンネが反射的に聞き返した。


「本人の意思が決まらないうちに、異なる世界の宗教や文化、道徳を押し付けてはだめだ」

「彼らの将来を考えるなら、そうした方がいい」


「それに、子供をさらってきて、洗脳したと責められる可能性がある」


「誰からですか?」

 今度は、うなづきながら静かに聞いていたアリアが聞き返す。


「ツインアースという異世界や、お前の存在に気付いた時、それを危険な敵と考える……この世界の国や宗教だ」


「……奴らは自分の都合で物事の善悪を決めるからな、少しでも違法性があれば、そこを突いて攻撃してくる」


 敵国の子供を連れ去り、都合のいい歴史や道徳を教え、自国の味方になるよう仕向ける。

 今、この世界で戦争中に行われている行為を、アリアは知っていた。

(あんな奴らと同じにされるのは頭に来るけど、何も知らない人はそう思うのかもしれない)


「私は、批判され責められても、別に構いません」 


「お前が良くても、この世界に住む仲間たちを危険にさらす可能性がある」


「そして何より、どこに住み、どう生きるかを決めるのは、この子たちだ」

「この世界にも、敬意を払うべき素晴らしい信仰や文化がある。一つの考えだけを押し付けない様にしないといけない」


 アリアは深く息を吐き……そして言った。

「わかりました、この子たちが自由に未来を決められるよう、私は見守っていきます」


「俺はこれから父上に報告して、拡散されたお前の動画と保護した子供たちの対応について、相談してくる」


「子供たちのこともですか……」


「お前たちが一日中、あの子たちの世話ができるわけじゃないだろう」

「とにかく今日はもう遅い、お前たちはもう寝ろ」

 ソウジはそう言ってアリアの部屋から出て行った。


 アリアは子供たちについて、ソウジが「世話」という前向きな言葉を使ったことに安堵していた。


 ――次の日


 アリアとリンネは、ソウジに呼び出された。


 メルマルク商会、地球での代表を務めるソウジの執務室。

 ドアを開けると、そこにはソウジの他に、元聖女騎士団副長「カイン・ランドール」と勇者の娘であり、ウォルハイト王国、国王の妹でもある「ネフィア・ゲルトハイム」二人の姿もあった。


「アリア様、リンネ……とにかく無事でよかった」

「でも、私に内緒にするなんてひどいですよ」

 カインは心配しながらも、少し不満げな顔をした。


「カインごめんなさい」

「あなたにも相談したかったけど、仕事の邪魔をしてはいけないと思ったの」

 彼はソウジの秘書として、移民後すぐに仕事を始めていた。

 そのため、アリアはしばらく様子を見てからカインに話すつもりだった。


 続いてネフィアが、明るい顔でアリアに話しかけた。

「アリア様、久しぶりです」

「うちの馬鹿兄が迷惑を掛て申し訳ありませんでした。まさか自分の息子の嫁に……」


「いえいえ、とんでもありません」

 アリアは慌てて、話を遮るように手を振った。

「全然、気にしていませんから」


「迷惑って何のことだ」

 ソウジが突っ込むように聞いた。


 その突っ込みに乗って、ネフィアが笑って続ける。

「ファルム王がアリア様を、王太子の嫁にって求婚して、断られたんだって」


 ソウジは目を丸くして驚いた。

「王太子様の嫁に!……それで、アリアは断ったのか?」


「当たり前です」

 アリアは顔が熱くなるのを感じ、つい声が大きくなる。

「私はまだ、男性と付き合ったこともないのに……いきなり結婚なんて、出来るわけないでしょ」


 王族の名誉のために黙っていたのに、王の身内から求婚話を暴露され、腹立たしくもあり、色恋に疎いアリアは、それ以上に恥ずかしさが、こみ上げてきた。


「ファルム王はもっと理性的で温情のある方だと思っていました。まさか自分の息子のために政略結婚を企むような方だなんて」

 カインは、王太子の嫁にアリアを求めた理由を察して、呆れたように話す。


「アリア様を王位安定のために利用しようとするなんて……許せません」

 リンネも少し怒ったように目を吊り上げた。


「そう言わないであげてよ」

 ネフィアは両手を合わせるようにして言った。

「王太子のシャルルは、本気でアリア様のことが好きなんだから」

「……それに、王妃の座は貴族の娘の憧れでしょ!」


「そういえば……」

「シャルル王太子様は花や贈り物を持って、何度もアリア様を訪ねてきていました」

「王太子様と結婚すれば将来は王妃に……アリア様はなっていたのですね」

 物語のヒロインに憧れる少女のように、リンネの瞳がきらきら輝いた。


 王妃の座が聖女同様に、窮屈で自由がないことを知っているアリアは、それが冗談でも嬉しくない。

(早く話題を変えないと……胃が痛くなりそうだわ)

 引きつった笑みを作り。

「そろそろ、本題に入りませんか」

 そう言って、アリアはソウジに視線を向け促した。


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