第13話 兵士の贈り物
前もって書き溜めていた話は、この13話までとなります。
今後は週1~2話のペースで投稿する予定ですので、よろしくお願いします。
「お嬢さん忘れものですよ……」
振り返ると、そこに立っていたのは――昨日、病院の場所を教えてくれた兵士だった。
ただ昨日と違い……粉塵に汚れたブロンドの髪は色を失い、顔は泥にまみれている。
それでも彼は、どこか楽しそうに笑って、アリアに近づいてきた。
「おやおや……また子供を拾ったのかい。これじゃ、ソウジも大変だね……」
「どっ!どうしてお兄様の名前を知ってるんですか!?」
アリアは反射的に少女を抱く腕に力を込め、身構えながら聞き返した。
兵士は肩をすくめる。
「その辺はソウジに聞いてくれるかな……時間もないし」
「はい、これ忘れ物」
「こんな物騒なものおいてかないでよ。誰かに見られたらどうするの」
そう言って兵士は腰に付けた小さなポーチから、昨日置いていったシーツを出して渡した。
「いえ、これが何なのか気付く人はいませんから」
(この人……これが何なのか知っている?)
「そんなこと、ないかもよ」
兵士は意味深に肩をすぼめてみせた。
「それよりも、何でそんな小さなポーチからこれが出てくるんですか」
それが空間拡張型の魔法ポーチだと悟ったアリアは、思いっきり不審者を見る目を兵士に向けた。
「そっそんなものを持ってる人が地球にいるわけないし、いてもいけません!!」
「そんなこと言わないでよ……ほら、これを上げるからさ!」
今度はポーチからコンビニの袋を出して押し付ける。
「それじゃ、ソウジによろしくね!」
兵士は背を向けて瓦礫の中を歩き始めた。
「いえ、ソウジお兄様には、言ってきていませんから!」
「あははっ!!君って最高だね……」
笑いながら少しだけ振り向いて、立ち止まることなくそのまま去っていく。
アリアは袋の中を覗いて――息を呑んだ。
マナドロップが、ぎっしり詰まっている。
「……ありがとうございます!」
遠くなる背中に届くよう、声を上げた。
(これで、戻ることが出来る……)
(本当に、助かった)
子供を連れて建物に入ると急いでマナドロップを口に入れる。
(そういえば、彼の名前を聞くのを忘れてた……助けてもらったのに……)
アリアは少し後悔しながら、……魔法陣を発動させた。
――子供を連れ部屋に戻ると、そこにはソウジとリンネの姿があった。
ソウジは何も言わず椅子に腰かけ、こちらを見つめている。
連れ帰った子供をリンネに預け、観念したようにアリアはテーブルを挟んで座った。
ソウジはスマホを操作し、テーブルへ置く。
「これを見てみろ……」
動画の再生が始まった。
画像は粗く不鮮明だが、そこには、昨日アリアが遭遇した戦闘シーンが映し出されていた。
「お兄様!この動画はどうしたんですか?まさか隠し撮りを……」
「馬鹿なことを言うな!俺はそんなに暇じゃない。これは今、SNSで話題になっている動画だ」
「問題はここから先だ」
倒れた子供に戦車の隊列が迫っていた。一瞬砂嵐が画面を覆い隠した後、黒い影が子供抱いているように見える。
……そして声にならない叫び声が、ノイズのように聞こえた。
「止――〇れ〇っ!!」
「叫び声で戦車が止まり、そこに上空からミサイルが落ちてくる」
「女神降臨の映像として拡散され、大騒ぎだ」
「粗い画像と砂嵐で不鮮明だが、見る人が見れば、これがお前だとわかる」
「問題はこれだけじゃない……ついさっき、また新しい動画が公開された」
ソウジは短いため息をつき、その動画を再生した。
飛翔していた何発ものミサイルが、雷のような光に打たれて空中で爆発してゆく。
そのさらに上空。
雲に届きそうな高さを、小さな影が、薄い光を帯びて消えていった。
「これは、どういう事なんだ……」
「俺が納得できるように、説明してくれないか」
ソウジは感情を押し殺した声で、淡々とアリアに聞いた。
兄の無表情の顔に逆に凄みを感じる。もう隠せないとアリアは悟った。
(これは……正直にちゃんと話した方がよさそうね)
「お兄様、申し訳ありませんでした」
アリアは、昨日と今日の自分の行動を、包み隠さず話した。
「……分かった」
話を聞き終えたソウジは、意外にもアリアに向かってねぎらいの言葉をかけた。
「お前と子供たちが無事でよかった」
アリアの胸の奥に溜めていたものが、一気にほどけそうになる。
けれど同時に――
次に来る言葉が、どれだけ重いかも分かっていた。
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