たずねびと
もうすぐ、こちらの世界でも夏ですね。夏風邪に気を付けていい読書ライフを!
お茶と餅がおいしい春も過ぎて、季節は夏となった。特に今年の夏は気温が高い。地球は何がしたいんだ?風邪にでもかかってるんじゃないか?
俺は扇子でパタパタと首元を仰いでいるが一向に暑い。
「わしも仰いでくれぬか?」
暑さにやられて縁側でくたばっている和尚が言う。
「主を仰ぐ暇があらば自分をあおいでおるよ。」
こんな季節に寺に来る奴はいないだろう。もしくは、よほど一次求心性神経がサボっておるか何かで、暑さを感じない化け物だろう。ハハッそれこそ鬼か何かだな。
…そう思っている愚かな時もあった。本当に来るとは普通思わないだろう。それも鬼が。
「道案内頼みたく、法蓮の寺はいずこだ?」
昼下がり、寺の前で掃除をしている俺の頭のはるかに上空から声がした。見上げてみると、1間は優位に超えており、菅笠をかぶっておるのと、若干西に偏った太陽による逆光で、顔はよく見えない。肩幅も広く、米俵2俵を平然と担げそうだ。
「寺ならここだが、何か用なりや?」
そういえば、和尚の名前って、「法蓮なんちゃら」みたいなやつだったな。いっけね、「和尚」としか呼ばないから、忘れかけてた。てへぺろ!
「まあな。」
なんだこいつ冷たい奴だな。摂氏−273.15 度に凍った視線が俺のココロを貫いた。俺のココロを構成している原子の振動が完全に止まるような視線だな。よかった。少しは涼しくなりそうだ。とはいえ、多少腹が立った。
そいつは、どかどかと寺に入っていった。
「はじめまして~」
と言われて
「今忙しいんで。」
と答えられた気分だ。もどかしい。あーあ掃除はやめじゃ。箒を立てかけ、俺も寺の中に入っていった。