拾われた鬼
鬼だって夢を見るときがある。自分のところにとある鬼の生き残りが訪ねた。そいつは、頭の切れるもので反乱を起こすための兵を四方八方から砂鉄が磁石にくっつくかの如く集めていき、反乱を起こして桃太郎の天下を燃やし尽くし、鬼と人間を救い出す。そんな奇跡が起きないことがないことは解っている。だけど、でも、もしかしたら、と考えてしまう。
寺という名のついた俺の家の、閉まり切ったふすまの間を通り抜け、活気に満ち満ちた声が茶を飲みながら餅を食い絶賛優雅なティータイム中の俺の耳に入った。
「むかしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんがいました。
ある日、お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。…」
桃太郎の物語だった。現在進行形で、悪徳政治中の桃太郎の話をするとは、この活気溢れんばかりの声の持ち主の和尚は、やはり完全に常軌からは逸している。
その言葉を胸にとどめながら、雀の涙ほどの、興味を持ってしまったので、(持ちたくなかったがな)、外を確認するために、一旦湯呑を置き、ふすまを開けるとあろうことか、童20人程度相手の大演説を繰り広げていた。
さすがに、さっきまでほのぼのと飲んでいたお茶を噴き出したね、そればかりか喉に餅を詰まらせ天国(地獄かもな)への片道切符を手にするところだった。
すぐさま駆け寄り鉄槌の言葉を食らわせてやりたかった。
「和尚さすがに、やりすぎじゃ。この子らが真似でもしたらどうする。」
まあ、まともな返答が来るとは思えないがな。
「その時は、その時考えればよい。今を大切に生きよ。」
ほらやっぱりだ。和尚とはなんだかやりにくい。言葉では表せない何かがある。和尚に拾われた時もそうだった。
鬼ヶ島の戦いで俺の父は、戦死した。俺は地獄そのものを見た。味方の鬼の
「痛い痛い苦しい」
「誰か助けて誰か」
という喚き声、まだその時は12歳であった俺が見ても助からないとわかる傷を負いながら戦線離脱をする者たち。誰かもわからない肉片とかした元生き物。母と一緒に何とか逃げ、都までたどり着いたが、都ではこの未曾有の大飢饉が起こっており。死者は3万2000まで登った。母もその一人である。鬼も人間も変わりない。飢えはきついし、腹がえぐれれば死ぬ。肌だって赤くないし、60~80歳になれば寿命が尽きる。若干、角の退化したようなものが1か2本ついているだけである。
路の端で食糧も尽きうずくまっていた俺の手をとり、寺へ連れてきてくれた。和尚には、上がる頭もないが、腹の底では何を考えているのかがさっぱりわからん。空白の100年状態だ。俺を助けたのはただのきまぐれか、それとも…
こんにちは!ハルヒ好きです。どちらかというと、あらすじのほうが個人的に面白いと思うので、見に来てほしいです。