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6話 一通の手紙

 ブルガリア支部の支部長、イヴァン・イヴァノフの手紙は早急にパリへ送られた。

 手紙はリレーのように昼夜問わず運ばれた。

 その結果、手紙は約20日でパリに届いた。


ーーーフランス本部

「本部長、ブルガリア支部から手紙が届いています」

「ブルガリア支部から、なんの手紙だ」

「まだ確認していないのでわかりません。でも、ブルガリアなので調査隊のことではないでしょうか?」

「それだと手紙が来るのは速すぎないか?」

 本部長はそう言いながら手紙を受け取った。

 本部長はすぐに手紙の内容を確認した。

 内容を確認した時、本部長は固まってしまった。

 しばらく、沈黙の時間が続いた。

「本部長、どうしましたか?」

 手紙を届けた女性が聞いた。

「…アランに…手紙を出す。書くから少し待ってくれ…」

 本部長は焦りながら言った。

「はっ…はい。わかりました」

 女性は困惑しながら言った。

 本部長は急いで手紙を書き、その女性に渡した。

「確か…3日後にル・アーヴルからハンブルクに行く蒸気船が出るはずだ。それを使って手紙をベルリンまで急ぎで頼む」

 その本部長の言葉で急いで手紙を送ることとなった。


 パリからル・アーヴルまで馬でリレー方式で休みなく、手紙が渡されていった。

 その結果、2日半で手紙はル・アーヴルに到着し、蒸気船へと乗せられ、ハンブルクを目指した。

 蒸気船はハンブルクまで雨の影響もあってか予定よりも1日遅れの4日で着いた。

 ハンブルクからはまた、馬でリレー方式で行くことになっていた。

 そして、手紙はハンブルクからベルリンまで約1日で到着した。


ーーーベルリン、アラン視点

 火傷の男との戦闘から約2ヶ月が経過していた。

 僕はルーカスとローズさんのおかげで立ち直ることができていた。

 僕は大切な人のために戦う、生きて大切な人と笑いあうために戦う。

 そう言い聞かせて、なんとか立ち直った。

 立ち直るまでの間、ルーカスとローズさんが支えてくれた。

 ハルトマンさんも気を遣ってくれてしばらく休ませてくれた。

 そうして、僕とルーカスはいつも通り、模擬戦をしていた。

 火傷の男以降、大きな事件は起こらなかった。

 小さなことはあったが基本的に警察が対応していた。

 だから僕たちは模擬戦しかやることがなかった。

「いやぁ…暑いな」

 模擬戦の休憩中にルーカスが言った。

「夏真っ只中ですからね」

 僕は答えた。

「そんなの…わかってるよ。もう、昼休憩にしようぜ」

「そうだね。少しはやいけど昼食にしよう」

 そうして僕たちはいつも通り、食堂へ行った。


 2人で食事しているところにハルトマンさんが来た。

「ルーカス、アラン君。食事中に失礼」

「どうしたんですか?ハルトマンさん」

 僕はハルトマンさんに聞いた。

「アラン君にフランスの本部の方から急ぎの手紙が届いてね」

 そう言って、ハルトマンさんは手紙を渡してきた。

「わざわざありがとうございます」

 そう言って僕は手紙を受け取り、中を確認しようとした。

「アラン君、手紙は支部長室で確認を頼めるかな。急ぎで来たものだから内容が私も気になってね」

「はい、わかりました。昼食後でも大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ないよ。私も今から昼食にするつもりで来たからね」

 そうして、ハルトマンさんも一緒に昼食を取ることにした。

 食事中は、手紙の内容を予想しあった。


 そうして僕たちは食事を終え、支部長室へ行った。

「じゃあ、アラン君、手紙を読んでくれ」

「はい、わかりました」

 そう言って、僕は手紙を封から出した。

 手紙は2枚入っていた。

「1枚目から読みますね」

 僕はそう言って、1枚目を見た。

「えっと…僕のランクをEランクに上げると書いてあります」

「おぉーおめでとう、アラン」

「おめでとう、アラン君」

 2人が祝ってくれた。

「2枚目は何が書いてあるんだろう?」

 僕はそんなことを呟きながら2枚目を見た。

 僕は2枚目を見てすぐに、持っていた封と手紙の1枚目を落とした。

「どうした、アラン」

「どうしましたか、アラン君」

 2人は僕の異変に気づいて聞いてきた。

「…レオさんが…」

 僕はそう呟いて、泣き崩れてしまった。

 そうなってしまった僕を2人はギルドの医務室まで運んでくれた。


 僕は医務室で落ち着くまで泣き続けた。

「アランさん、大丈夫ですか?」

 ローズさんが慌てた様子で医務室に入ってきた。

「ローズさん……今は落ち着いてきたので大丈夫です」

 3人は椅子に座って僕が話し始めるのを待った。

「えっと、みなさん心配かけてすみませんでした」

 僕は3人の方を向いて謝った。

「アラン君、手紙にはなんと書いてあったのか教えてくれないか」

 ハルトマンさんが聞いてきた。

「はい、わかりました」

 僕は一呼吸をおき、手紙の内容を話し始めた。


「手紙には僕の相棒のレオさんが意識不明の状態であると書かれていました。さらに、レオさんと一緒に行った調査隊が壊滅したとも書いてありました」

 僕のその言葉にみんなは固まってしまった。

 ローズさんは何か言おうとしていたけど、声が出ないみたいだった。

 そんな時、僕は手紙が3枚であることに気づいた。

 2枚目と3枚目が綺麗に重なっていた。

「もう一枚ある…」

 僕は小さく呟いた。

「…なんて書いてあるんだ」

 ルーカスが聞いてきた。

「レオさんはブルガリアの首都のソフィアにいるそうです。…ハンブルクから蒸気船が出るのでそれに乗るようにと書いてあります」

 僕は手紙を大雑把に読んだ。

「行きましょう。アランさん」

 ローズさんが決心したように言った。

「はい、行きましょう」

 僕はそれに答えた。

「俺もついて行っていいか?」

 ルーカスが聞いてきた。

「ルーカスがいると心強いからお願い、一緒に来てほしい」

 僕はルーカスを見て言った。

「おぉ、わかった。一緒に行くぜ」

 ルーカスが一緒に来てくれることになった。

 そうして、僕たち3人は蒸気船に乗るためにハンブルクを目指した。


 僕たち3人はハンブルクまで急いで行った。

 その結果、3日半ぐらいで到着した。

 僕たちは着いてすぐに港へと行った。

「よし、着いた…」

 僕は港に着いて、船を探した。

 船はすぐ見えるところに一隻だけ停まっていた。

 僕たちはその船に走って近づいて行った。

「止まりなさい。身分を証明できるものを提示してください」

 船の近くにいた男に止められた。

「あっはい、ギルドカードです」

 僕たちはその男の言うことに従い、ギルドカードを見せた。

「あっ、アラン・オベールさんですか、すみませんでした」

 その男は謝って、すぐに船に案内してくれた。

「すみません、急ぎなのに止めてしまって…」

「いえ、あなたは自分の役割を果たしただけですよ」

 そんな会話をしながら、僕は蒸気船に乗ることができた。

 船は僕たちのために停まっていたみたいで僕たちが乗ったらすぐに出港した。


 僕は船が出ても落ち着かなかった。

「アラン、相棒は生きているんだろ…」

 ルーカスは海を見て、俯いている僕に話しかけてきた。

「そうだね…」

 僕は小さな声で呟いた。

「アランさん、今は落ち着いて、着くまで待ちましょう」

 落ち着かない様子のローズさんが僕の隣にきて言った。

「そうだね…。着くまではゆっくりしてよう」

 僕はそう言って船内へと3人で戻った。

 蒸気船は北海を通り、ジブラルタル海峡に来た。

「この船は一旦、物資補給のためにアルヘシラスの港へ一時停泊いたします」

 船員が僕たちのところに伝えに来た。

「わかりました。どのくらいですか?」

「1時間程度を予定しております」

 船員はそう言って、僕たちのところから去って行った。

 少しして、船は港に停まった。


 僕たちは船が停まっている間も船上にいた。

「アラン、随分、落ち着いたな」

 ルーカスが僕の隣に来て話しかけてきた。

「まぁ、海の上だと、何もできないからね」

 僕は海を見ながら返した。

「そうだな…」

 ルーカスはそう言って、船内へと戻って行った。

 僕もしばらくしてから船内へ戻った。

 僕が船内に戻って、少ししてから船はアルヘシラスの港から出港した。

 この時、ベルリンを出発してから1週間はすでに過ぎていた。


 蒸気船はレオさんのいる、ソフィアから近いアレクサンドルーポリの港を目指していた。

 船旅は大きな問題はなく、順調に行った。

 そうして、アルヘシラスの港からアレクサンドルーポリの港まで約5日で到着した。

「アラン、ここからは馬だ」

「分かってるよ、ルーカス。急ごう」

 僕とルーカスは船を降りて、そんな会話をした。

「馬を連れてきました。急ぎましょう。アランさん、ルーカスさん」

 先に降りて行った、ローズさんが馬を連れてきてくれた。

「2人とも行きましょう」

 僕は2人にの方を向いて言った。

「はい!」

「おぉ!」

 2人は頷きながら返事をした。

 そうして、僕たちはソフィアへと馬を走らせた。


 僕たちは山を避けて、道路を走っていった。

 途中に地図でムサラ山である場所の横を通ったが山がなくなっていた。

 僕たちはその光景に驚きはしたが見ている暇はなかった。

 出来るだけ速く、レオさんのところに行きたかった。

 アレクサンドルーポリからソフィアまでの旅の道中は順調で、馬を交代させながら最小限の休憩でソフィアを目指した。

 そうして、ブルガリアの首都であるソフィアに5日程で到着した。


 僕たちはソフィアに着いてすぐにギルドの場所を街の人たちに聞いた。

「あの、すみません。ギルドってどこですか?」

 僕は人を見かけてすぐに詰め寄る形で聞いた。

「えっと…あの、この道をまっすぐ行った中心の方にあります…」

 街の人は後退りながらも答えてくれた。

 それを聞いた僕たちは街の中心に向かって馬を走らせた。

 中心に行くと、ギルドであろう建物が見えた。

「あそこだ!」

 ルーカスがその建物に指を指しながら言った。

 僕とローズさんはその言葉に頷き、3人でその建物まで向かった。


 僕たちは建物の前に来た。

 馬は隣に預かってくれる場所があった。

 馬を預けてすぐルーカスが入っていいって、僕たちはついて行くようにして入っていった。

「……」

 ルーカスは入って、周りを見渡す。

「受付はあそこか…」

 ルーカスがそう呟いて、僕たちはその受付に行った。


「ソフィアギルドへようこそ。どのようなご用件でしょうか?」

 僕たちが受付に来てすぐに、受付の女性が話しかけてきた。

「すみません、こちらにレオ・デュランはいますでしょうか」

 ルーカスの後ろにいた僕は前に出て、食い入るように聞いた。

「すみませんが…ギルドカードの確認をさせてもらえないでしょうか」

 僕がレオさんの名前を出したら受付の人の顔から笑顔が消えて、真剣な表情をした。

「はい…」

 僕はカバンからギルドカードを取り出して、受付の人に渡した。

「確認しました…すぐにご案内いたします」

 受付の女性はすぐに椅子から立ち上がり、僕たちを奥の部屋へと案内してくれた。


 僕たちは支部長室と書かれている扉の前に案内された。

「支部長、デュランさんの案件です」

 女性は扉をノックして言った。

「入ってくれ」

 間髪入れずに中から男性の声がした。

 その声を聞いて僕たちは支部長室の中へと案内された。

「初めまして、ブルガリア支部の支部長のイヴァン・イヴァノフです。えっと…アラン・オベール君はどなたかな?」

 入ってすぐのところに支部長さんがいて、挨拶をしてくれた。

「あっ、僕がアラン・オベールです」

 僕はみんなの前に出て名乗った。

「あの、レオさんはどちらに…」

 僕はすぐに聞いた。

「すまない…レオ・デュラン君は近くの病院にいる。私の勝手で君たちをここに案内させた、申し訳ない」

 支部長のイヴァノフさんが頭を下げた。

「すぐに病院まで案内しよう」

「よろしくお願いします」

 僕はその言葉に軽く頭を下げて言った。


 イヴァノフさんの案内で僕たちは病院へと来た。

「イヴァノフです。レオ・デュランさんの病室に…」

 イヴァノフさんが病院の受付の人に話しかけた。

「すぐ、ご案内いたします」

 受付の女性は僕たちをすぐにレオさんの病室に案内してくれた。

「こちらになります。…病院内は静かにお願いしますね」

 女性は僕たちにそう言って、この場をあとにした。

 僕は病室に入る前に一呼吸を置いた。

「…入りましょう」

 僕はドアの前に立って、言った。

 そうして僕はドアをゆっくりと開けた。

 ドアを開けた僕の目に映ったのはまるで熟睡しているだけに見えるレオさんだった。

 傷一つなく、ただベッドで寝ているだけ。

 僕はその姿を見て、涙を流していた。

 その後、僕はそのままレオさんの眠るベッドへと歩いていった。

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