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3話 2人の旅

 日が上がりきる前、私たちの旅が馬の軽快な足音とともに始まった。


「お互いを知るために自分の魔法の話をしませんか?」

 馬の足音だけが響く中、トムがいきなり話し出した。

 皆は少しびっくりしたがすぐに答えた。

「いいですね。お互いを知っておくことは大切だと思います」

「私もその提案に賛成!」

「私もいいと思います…」

 二人も同意見だった。

 ローランさんは非覚醒者だからと言って、話には混ざらなかった。

「じゃあ、言い出しっぺの俺から」

 そこから会話が始まった。

 静かな旅が少しずつ賑やかになっていった。

「俺の魔法は水魔法で、基本魔法の『水球』を使えるし、飲み水としても出せるから遠慮なく頼ってくれ」

「じゃあ、そうさせてもらうわ」

「だから、荷物に水があまりなかったのか」

「そうなのか…?」

 私の言葉にトムが呆気に取られながら言った。

 その姿を見てか、リリーが口元を押さえながら静かに笑った。

「ふふっ」

 その笑い声を聞いたからか、マーガレットも笑った。

「あはは、あんた気づいてなかったの」

「うん…気づかなかった…」

 その言葉を聞いて、マーガレットはさらに大きな声で笑った。

 私もつられるように少し笑ってしまった。

 私たちがひとしきり笑ったあと、マーガレットが話し始めた。

「次は私が魔法の話をしていい」

 皆、頷いた。

「私の魔法は土魔法、基本魔法の『土矢』で攻撃できるし、土の壁を作って防御もできるよ」

「攻撃と防御、どっちもできるのか。優秀だな」

 私の言葉にマーガレットは答えた。

「えぇ、そうよ。だからこの任務が終わったらEランクに昇格するの」

「いいなぁ、俺はまだFランクなのに…」

「私も任務を達成しない限りFランクよ」

 マーガレットのこの発言をきっかけにランクの話になった。

「ちなみに二人のランクは?」

「私はEランクです。リリーさんは?」

「わっ、私はFランクです…」

 リリーはおずおずと答えた。

「えっ、レオってEランクなのー」

「えっ、レオってEランクなのか」

 トムとマーガレットが揃って言った。

「まぁ、私は基準として最初につけられたので…」

「基準としてでも、最初っからEランクはすごいよー」

「そうだよ。Eランクはすごいな〜」

「Eランク、すごいです」

 3人がが褒めてくれた。

「褒めていただき、ありがとうございます」

「あの、レオさんの魔法はなんですか?」

 リリーが小声で言った。

「あぁ、私の魔法は風魔法です」

「風かぁ、ちなみにどんな魔法を使えるの?」

 マーガレットが聞いてきた。

「今は基本魔法の『風矢』しか、実戦では使えませんね」

「基本魔法以外の魔法はないのか?」

 次にトムが聞いてきた。

「試作中の魔法はありますがまだ実戦で使うには危ないですね」

「あの…どういった魔法なんですか?」

 今度はリリーが質問をしてきた。

「えっと、剣に風を纏わせて斬撃を飛ばす魔法です」

「斬撃かぁ、憧れるなぁ」

「あはは、ガキみたいだな」

「なんだとー」

 マーガレットの言葉にトムが少し笑みをこぼしながら言い返した。


 少し落ち着いてから会話が再開した。

「リリーの魔法は何?」

 マーガレットが聞いた。

「私の魔法は光魔法です。今回は回復担当です…」

 リリーは自信がなさそうに答えた。

 そこにローランさんが話に少しだけ混ざった。

「今回は洞窟探索なので、リリーさんには明かりを担当してもらうことになります」

「じゃあ、このパーティの要はリリーだね」

 私の言葉にみんなが同調した。

「そうだな」

「リリーがいればこのバカが怪我しても大丈夫ね」

 マーガレットはトムに指を差しながら言った。

「うん、そうそうって誰がバカだってー」

 トムとマーガレットの言い合いがまた始まった。

「ふふっ」

 リリーが言い合っている2人を見て笑った。

「あはは」

 私たち3人はリリーの笑い声につられて笑った。

 私たちの旅は基本的にそんな旅だった。


 トムとマーガレットが言い合って、

 それを見てリリーが小さく笑う、

 それを聞いて他のみんなも笑った。

 そうして、お互いに初任務で緊張していた旅であったが、時間が経つとともに緊張が解けていった。

「もう少しでブルガリアの国境です」

「ムサラ山ってどこにあるんだ?」

「あんた、任務なのに把握してないの」

「お前こそ、わかるのかよ」

「わかんないわよ」

「わかんないのかよ」

 今日もトムとマーガレットが言い合いをする。

 そしていつも通りリリーが笑って、それにつられてみんなが笑った。

 ひとしきり笑い終えて、話が戻る。

「ムサラ山は国境を超えてすぐにあります。まぁ、すぐと言っても大きな地図を広げて見た場合なのでもう少しかかると思います」

 ローランさんは地図を広げながら話した。

「ムサラ山に行くのは分かったが、なんの調査をするんだ」

 トムが何気なく聞いた。

「ムサラ山に災厄後にできたとされる洞窟が見つかったのでその調査です」

 ローランさんが答えた。

「ちなみに調査期間はどのくらいを予定してますか」

 私は気になってローランさんに質問をした。

「私の予定では短くても2週間は予定しています。でも、長くなった場合は1ヶ月で中断して、報告のために本部まで帰ることになります」

 その答えを聞いてみんなが静かになった。

「もう遅いので寝ましょう」

 ローランさんがそう言って、見張り番のトム以外は眠りについた。


 約1週間がたった。

 私たちはムサラ山に到着した。

「洞窟はどこですか」

「ここからだとすぐ近くのはずです」

 そんな会話をしながら洞窟を目指した。


 少し歩いて、すぐに洞窟に着いた。

「早速、洞窟に入って調査を始めましょう」

「では、私が先行します」

 そう言って私は先頭を歩いた。

 私の後にはトム、マーガレット、ローランさん、リリーの順に続いて入っていった。

 洞窟内は人ひとりが余裕で歩ける広さだった。

 私は周りを注意深く観察しながら慎重に奥へ進んで行った。


 土の匂いだけの洞窟をしばらく進んだ。

 ん?…誰かいる?

 曲がり角の先に気配がした。少し嫌な予感がした。

 それでも進み曲がり角に来た時、人影が見えた。

 次の瞬間、全身に戦慄が走る。

 人の形をしているのに、そこだけ空間が歪んでいるように見える。

 あれは…魔王。


ーーー初任務前

 レオとアランは部屋を出て別れ際

「レオさん、初任務頑張ってください」

「あぁ、アランも頑張れよ」

「はい!」

 そう言葉を交わし、2人はそれぞれの任務へ別れていった。

 互いに不安はあった。

 でも、2人は信じていた。

 成長して再開できることを。


ーーー初任務、アラン視点

 僕はローズさんとベルリンにあるドイツ支部に行くことになった。

「オベールさん、馬の準備はできているのでいつでも出発できます」

「ありがとうございます。ローズさん」

「では、出発しましょうか」

「はい、行きましょう」

 僕とローズさんはベルリンに向けて出発した。

「ローズさん、予定ではどのくらいで着きますか?」

「予定では約1ヶ月です」

「では、1ヶ月の間よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」

 僕たちは改めて挨拶をした。


 旅は予定より多少遅かったが順調に進んだ。

「ローズさん、もうすぐで日が暮れます。今日はどうしますか?」

「そうですね。後少し行ったところにマインツという街があります」

「わかりました。今日はそこまで行きましょう」

 その日はマインツの宿屋で休息を取った。

 もう少しで3週間が過ぎようとしていた。

 予定よりも少し遅かったせいか少し焦りがあった。

 次の日の朝、激しい雨音とともに目が覚めた。

「おはようございます。オベールさん」

「ローズさんもおはようございます」

 ローズさんは身支度を済ませていた。

 僕は外を見て、一言つぶやいた。

「進めるかな…」

「ここではまだわかりません」

 ローズさんがふと答えた。

「ライン川を越えないといけないので、川の状況次第です」

 ローズさんは少し不安そうな顔をしていた。

「そうですね。とりあえず朝食にしましょう。宿主さんが朝食は作ってくれるっていたので」

 少しでも空気を変えるために僕はそう言って宿屋の一階にローズさんと降りていった。


「おう、兄ちゃんたち、ちょうど朝飯ができたぞ」

「ほんとですか!ありがとうございます」

「ありがとうございます」

 そう言って僕たちは朝食を食べ始めた。

「これ、美味しいですね」

「そうですね」

 ローズさんとそんな会話をしながら食事をした。

「宿主さんありがとうございました」

「兄ちゃんたち、こんな雨の中行くのか?」

「とりあえず、川の様子を見て決めようかと」

「そうかぁ、気をつけて行けよ」

「はい、渡れそうになければ戻ってきます」

 宿主さんとそう言葉を交わし僕たちは出発した。


「ローズさん、川は渡れそうですか?」

「そうですね、橋は無事そうですので渡れると思います」

「では、行きましょう」

 そうして僕たちは橋を渡った。

 橋を渡り終えたころで雨がさらに激しさを増した。

 僕は焦る気持ちを抑えながら雨の中を進むことにした。

 天候の影響か、今日はそこまで進むことができずにいた。

 疲れのせいか不安が増す。

「オベールさん、とりあえずこのままフランクフルトという街に向かいます」

 雨の音にかき消されそうな声が聞こえた。

「わかりました。そこまで頑張りましょう」

 僕らは不安な気持ちを抑えて励まし合いながら走った。できるだけ速く街に着くために。


 街に着くころ、雨は弱まっていた。

 厚い雲の隙間から見える空はもう夜だった。

 雨のせいかものすごく疲れていた。

「オベールさん、もう少しで着きます」

 ローズさんの声が疲れているようだった。

「はい、頑張りましょう」

 そうして、フランクフルトについた。

 運がいいことについてから、すぐに宿屋が見つかった。

「こんな雨の中、大変だったでしょ、ゆっくり休んで行ってくれ」

「ありがとうございます」

 僕らはそう言って、疲れた体で部屋に行った。

 部屋のベッドに横になったローズさんは安心したのかすぐに寝てしまった。

 僕も、ベッドに横になって安心したように、すぐ眠りについた。


「オベールさん、朝ですよ」

 僕はその声で起きた。

「おはようございます。ローズさん」

「おはようございます。オベールさん」

 僕たちは挨拶をして身支度をした。

 そして、支度が終わり下へ降りていった。

「ゆっくり休めたかい、朝食食べていきな」

 そう言って、宿主さんが食事を机に置いた。

「ありがとうございます!いただきます」

「ありがとうございます。私もいただきます」

 宿主さんにお礼を言って僕たちは朝食を食べた。

「あんたたちはどこに向かってるんだい」

「僕たちはベルリンの方に」

「ベルリンに行くのかい、それなら明日ベルリンに行く機関車が出るよ」

「本当ですか!?」

 つい大きな声を出してしまった。

「あぁ…ほんとだよ。最近試運転で安く乗れるよ」

 大きな声を出したせいか宿主さんを少し驚かしてしまった。

「ローズさん、乗れるか確認しに行きましょう!」

「そうですね、アランさんいきましょう!」

 ローズさんはテンションが上がっているのか、僕のことを名前で呼んだ。

「あっ、すみません名前で呼んでしまいました…」

「別にいいですよ。これからは名前で呼んでください」

 僕たちはそうした会話をしながら朝食を済ませて駅へ向かった。


「すみません、明日ベルリンまで行く機関車が出ると聞いたのですが」

 ローズさんが駅で聞き取りを始めた。

「おぉ、明日乗りたいのか?」

「2人、乗ることできますか?」

「2人ぐらい余裕だよ、ここまでは何できたんだ」

「パリから馬で…」

「馬で来たのか。2人ってことは馬は2匹か」

「はい、2匹です」

「それなら馬も乗せれるぞ」

 宿主さんの情報とローズさんの聞き込みのおかげで僕たちはベルリン行きの機関車に乗れることになった。


 次の日の早朝、馬を連れて駅まで来た。

「おぉ、昨日の…」

「おはようございます。馬はどこに連れて行けばいいですか?」

「馬は後ろに乗せることになってるから、そっちの方に連れていってくれ」

「わかりました。ありがとうございます」

 馬を無事に列車に乗せ、僕らはベルリンへと向かい始めた。

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