プロローグ
世界はある年から変わった。
その1年は人類史上最悪の年と呼ばれた。
あの日は休日だった。いつもと変わらず過ごしていた昼頃、今まで経験したことのない揺れに襲われた。
地震は日本の広範囲で発生したみたいだった。
地震が各地でほぼ同時に発生したらしい。
意味がわからない。いや、分かりたくないだけだ。
その日、突如として自分の世界が壊れた。
地震から数日がたった。
私も周りにいる人たちも今日を生きていくことさえ希望が持てなかった。
そんな日々が続いた。
1ヶ月たったぐらいだろうか？
そんな時に新たなニュースを聞いた。
どっか海外でテロが起きたらしい。
どうでもよかった。今を生きることで必死だったから。
それからも数ヶ月間、海外のニュースの話がどんどん入ってきた。
火山が噴火した話。
隕石が落ちた話。
飛行機が数機を巻き込んで墜落した話。
過去最大の台風が猛威を振るった話。
山が崩れて街を飲み込んだ話。
『地震、テロ、噴火、隕石、事故、台風、土砂災害』の7つの大災厄により、人類史上最悪の年と呼ばれた。
でも、今考えればそれだけだったらまだいい方だったのかもしれない。
その年に世界の根幹が変わったのだ。
これまでの人類の歩みのほとんどが意味をなくした。
人工衛星は突如として機能を失い全て落ちて灰になった。
コンピュータも同様に機能を失った。
スマホも使えなくなった。
不思議なことはまだ続いた。
今まで通りに使っていたものが使えなくなった。
銃、ミサイルなどの兵器や飛行機、電車、船、車などの乗り物は動かなかった。
でも蒸気機関車や蒸気船は動いた。蒸気機関を原動力にした機械は使えた。
それ以外は文明が中世ぐらいまで後退した。
武器は銃が使えなくなり、剣や弓などになったはずだった。
でも、不思議な力が世界に現れた。人々はそれを『魔法』と呼ぶようになった。
それらにより混乱した世界をなんとかしようと世界の政治家などが世界統一政府を創設した。
世界統一政府はヨーロッパに本部が置かれたらしい。
それを知ったのは創設から数ヶ月過ぎた後だった。
日本に来る情報は大陸を横断した後に蒸気船で海を渡ってくる。
日本に来た情報もそれぞれの地域に渡るまでに時間がかかる。
ものすごく遅いのだ。
それでも情報はしっかり届いた。
世界統一政府の創設以外の情報は魔法と呼ばれることになった力が誕生したことなどを聞いた。
でも、どんな魔法があるのかはわからなかった。
魔法が使える人を『覚醒者』と呼ばれることになったと聞いた。
覚醒者は突然力に目覚めるらしい。
世界統一政府は覚醒者に対して、混乱を避けるために政府に属するように頼んでいるという話も聞いた。
それ以外にも政府は覚醒者に実力に応じて『ランク』をつけるとも聞いた。
聞いた話によるとランクは上から
『Z,X,S,A,B,C,D,E,F』
の9つに分けられるみたいだ。
さらにそのランクを政府所属と政府非所属で別々に3つの階級に分けられる。
政府所属の階級はランク『Z,X,S』は『英雄級』、ランク『A,B,C』は『聖騎士級』、ランク『D,E,F』は『騎士級』と3つに分けられる。
政府非所属の階級はランク『Z,X,S』は『魔王級』、ランク『A,B,C』は『悪魔級』、ランク『D,E,F』は『魔人級』と3つに分けられる。
世界統一政府は政府非所属の覚醒者に対しては『世界を混乱に陥れようとしている敵だ』と断言しているみたいだ。
それには理由があった。
7つの災厄で7人の魔王が誕生したからだ。
敵と断言した理由はそれぞれの魔王の下に政府非所属の覚醒者たちが集まっていっているからだ。
それだけだったら政府に属するように使者を送れば済む話だった。
でも、魔王たちは使者を皆殺しにし、首だけを送り返してきたそうだ。
だから政府は魔王たちを敵と断言した。
ちなみに『魔王』と階級の『魔王級』は全くの別物らしい。名前は似ているが、意味は全く異なる──政府の発表はそうだった。理由は政府が公表しないからわからない。
わかっていることは『魔王』は最低Sランクで登録されるということだ。
これらのことは人類史上最悪の年と呼ばれた次の年に急ぎで作られた。
さらに、暦も西暦から統一暦に置き換えられた。
世界統一政府は人類史上最悪の年を統一暦0年と定めた。
たった1年で世界は終わり、新しい世界が始まった。
