第96話 謁見の間の死闘 その11~おっぱい揉んだ話をするのはいわゆる揉みんぐアウトですかね?~
「はぁ? なんでだよ!?」
【問答している時間はありません! 今まで僕は間違った指示を一度も出してないでしょう!?】
「なるほど、説得力溢れる良い答えだ。わかった、行けばいいんだな!」
さっきより聞き分けの良くなった魔王は即座に陸上選手のするクラウチングスタートの構えを取ると、弾丸のように飛び出した。慌てたモーラスのツタが触手のようにうねって疾走する魔王を捕らえようと試みるも、ミレーナですらかわせなかったタックルを決めた魔王の俊足にかなうわけもなく、あっという間に扉への接敵を許してしまった。
「クソ、逃ゲル気カ? モシクハ助ケヲ呼ビニイクツモリカ? ソウハサセンゾ!」
なんと観音開きの大扉を、眠れる森の美女の城を取り巻く薔薇のように、見る見るうちにツタが覆っていく。だが、それはこちらとしてはむしろ望むところだった。この時点で愚かな大根はまんまと姦計にハマった。
【魔王、そこで魔法で扉を完全封鎖してください!】
「「エーッ!?」」
魔王と、そして10人のモーラス軍団までもが同時に驚く。だが、もはや全面的に僕に依存状態でおんぶにだっこの魔王はたちどころに了解し、考えるよりも早く行動に出た。彼女は折り紙の達人のごとき素早さで印を組み終えると、「宝物庫の守護を司る富の王ベガモックス神よ、汝の御手にて扉に錠をかけ、7つの封印を施さん! メトロック!」と唱えつつ、まだツタが這っていない箇所に両手を押し当てた。その場所を中心にまばゆい7色の光がほとばしったかと思うと、両開きの扉がガチッと鳴り、完全に隙間なく閉じる。恐らくは泥棒対策の魔法なのだろう。
「よし、次はどうする? もうモーラス十傑集が目を覚ますぞ!」
魔王の甲高い声に焦りの色が生じる。所狭しと林立する松ぼっくりの群れが、所々でガタガタと音を立てて震えているのが高台の僕からも俯瞰できた。
【まだ魔力は余力ありますか?】
「正直ギリギリだけどなんとかなる!」
反り返った魔王がブラの上からおっぱいを叩く。ここは信じるしかあるまい。
【でしたら奴らにさっきの水流魔法をぶっ放しつつ、ここまで来てください! 急いで! 危急存亡の時!】
「!」
そこまで喋ってようやく彼女にも作戦の概要が理解できたのであろう、目の色が変わった。




