第95話 謁見の間の死闘 その10~大根食べるとおっぱいが大きくなるって説ありますね~
となると、魔王の妹ことオドメールが謀反を起こした理由も想像がつく。彼女は、人間や亜人はおろか、仲間内からも金泥病の元凶と囁かれる呪われた姉に対し、人一倍複雑な感情を抱いていたのであろう。
「その通りだ。そしてついには我が妹までもが愚かな一部の世論に踊らされ、戦争の発端たる我をまつりごとの表舞台から遠ざけ、民衆の王家に対する悪感情を抑え込もうとしたわけだ。多分側近のカヌマ辺りにそそのかされたのではあるまいかと我は睨んでおるがな」
魔王は憎悪と怨念のこもった鬼神の面持ちで窓を一瞥した……あの空と海の向こうにある真の魔王城に届けとばかりに。
【でもそれって、魔王自身は一つも悪くないですよね。ひどい……】
「おお、わかってくれるか、ムネスケ。実に腹立たしくムカつくが、まさにそういうことだ。だから我を殺したところで何の解決にもならぬぞ、モーラスよ」
「黙レ、諸悪ノ根源メ。刺シ違エテデモ貴様ヲ亡キ者トシ、業病ヲ消シ去ラン!」
言うが早いか、10人のモーラスたちが一斉に松ぼっくりモードに移行したので、本当に巨大な松林にいるような気がしてきた。長話をしていた途中で魔王の上にあった火球はすでに消滅している。このままだと再び大魔法を使わねば助からない!
僕は限界を超えた集中力を発揮して、解決法を見つけ出す。ここまで上手いことやってきたんだ。何か策があるはずだ! 僕はこの世界に来て以来見聞きしたモーラスに関する出来事を一つ一つ丹念に精査する。彼女との初対面の時、魔王は何を言っていた? 確か……
『いいか、彼女はマンドレイクのモーラス、18歳だ。我が軍の兵站参謀をしている。ちなみにマンドレイクっていうのは植物系の魔物で、まあざっくり言うと動く大根みたいなものだ』
そうだ、明らかに彼女はまさにこの謁見の間でこのように部下を紹介した。どうやって兵站を調達しているのかは今まで謎だったが、分裂能力を見せつけられるとなんとなく想像がついてしまいそうで怖い……それはさておき、ここに何か効力のヒントがないか? 例えば大根と言えば……
【そうか! わかった! 入り口の扉に向かってダッシュで走ってください、魔王!】
ついに天啓を受けた僕は、手をこまねいて立ちすくんでいた魔王に檄を飛ばした。




