第91話 謁見の間の死闘 その6~ちなみにおっぱい揉んだだけで達しちゃったってのは作者自身の経験談です~
魔王とダベっている間にも、僕の脳の一部は現在の膠着状態を脱する方法を探るため、あらゆる過去の情報を検索していた。
(どこかに必ず解決の糸口があるはずなんだ……自分の記憶のどこかに……)
先のリプル戦でもそうだったが、戦いにおいては医療に限らず様々な知識が役に立つ。あきらめずに膨大な記憶の海をさまよっていた僕は、とある幼き日の自分にたどり着いた。あれは確か、近所の公園で……
【わかりましたよ魔王、火です!】
「火だと!? あいつを焼きぼっくりにしてしまうつもりか? そなた、割とえげつない作戦思いつくよな……」
魔王が明らかに蔑みの目つきで俺を見る。ひでえ!
【違います! どうせ簡単には燃えないと思いますし、適度に表面を炙ってやってください!】
「はいはい、やりますよ、やればいいんだろ、軍師どの」
魔王は、三国志で作戦の意図がわからず孔明に陰口を叩く張飛のごとく不平をこぼしながらも、ようやく腰を据えて呪文の詠唱に入った。
「光と熱とをもたらすアナフラニール神よ、その怒れる業火にて立ちはだかる者全てを灰燼に帰せしめよ!マーデュオックス!」
踊るように頭上に真っ直ぐに突き出された魔王の両手の間に火の粉が生じ、みるみるうちに大きな火球へと成長する。そこから太陽のコロナのように炎の鞭が松ぼっくり目掛けて伸びていった。
「無駄ダ、小生ノ殻ハ耐火製デ、決シテ発火スルコトハナイ。ヤメテオケ」
火の気を察したのか、モーラスの声が警告を発する。だが僕はそれを聞いて逆に確信した。彼女に炎は別の意味で有効だと。
【気にせずやっちゃってください! ファイヤーッ!】
「これ結構熱いからあまり好きな魔法じゃないんだよなあ……髪の毛がチリチリしてきそうだし。それに何も変わらないぞ!?」
文句をつぶやきながらも、魔王はどんどん巨大化する火の玉を律儀に掲げ続ける。確かにモーラスの言う通り、いくら真紅の舌が皮を舐めても、一向に燃える様子はない。魔王が意味の無い行為に思うのも無理はないだろう。だが、変化はじわじわと生じていた。
「あれ? 殻が……!?」
魔力が打ち止めになるなどブーたれていた魔王の目つきが変わった。なんと、今まで難攻不落の威容を誇っていた松ぼっくりの皮が、朝になると咲く花の花弁のように、徐々に開いてきたのだ。




