第88話 謁見の間の死闘 その3〜毎回おっぱいってサブタイに入れるの苦しくなってきたけど頑張る!〜
高窓から差し込む朝日が、水浸しとなった謁見の間の緑色っぽい石畳を優しく温める。きっと今日一日は良い天気となるだろう。僕は現実逃避気味にそんなことを考えていた。
「こ、こいつは……随分と固いな……」
魔王の形の良い額に、初めて冷や汗が浮かんだ。
【まだ最初の一手が通じなかっただけです! 頑張って!】
「しかし、こいつは一撃で岩をも砕く、水系の上位魔法なんだが……寝不足のせいかな?」
なんかこの人またとんでもないこと言ってるよママン!
【そんなウォータージェット並みのヤバい魔法だったんですか!? 殺す気ですか!?】
「だってそなたが、何でもいいからやってくれって言ったんじゃないか!」
【いや、確かにそうだけど!】.
「ま、いざとなったら強さを加減するつもりではいたのだが……予想外だったな」
そんなシャワーの水量調節みたいなことが出来るのね……
「だが、手加減するなと豪語するだけのことはあるな、彼女の強さは認めるよ」
魔王は一旦攻撃体勢を解くと、左手で額の汗を拭った。
「……」
モーラスは不気味に沈黙したまま微動だにしない。こちらの出方を探っているのだろうか?だが、これ以上何も追撃が無いと確信したのか、瞬時に松ぼっくりの鎧を解除し、日の光の下に本体を現す。そこには先のターンに倍するほどの例のミサイルが、ヤマアラシのトゲ状態にギッシリと生い茂っていた。
「おい見ろムネスケ! あっちの方が本気で殺す気っぽいぞ!」
【とにかく何でもいいからかわすか防御するかしてください!】
「おぬし、さっきから、『何でもいいから』ばっかりだな! 仕事しろよ作戦参謀!」
空しく言い合いを繰り広げているうちに、ムクムクと相手の竹の子っぽいとんがりがせり上がってくる。Jアラートが頭の中で鳴り響く。
【早く!】
「わかったよ! 東西南北四方の風を司る風雲児フォシーガ神よ、台風の目たる我の周囲で吹き荒れ、万年の巨木をもなぎ倒す嵐とならん! パーキネス!」
目で追えないほどの速さで結印した魔王が呪文を完成させるとほぼ同時に、視界を覆いつくすほどの松ぼっくりおっぱいミサイルが射出され、全方向から魔王に襲来する。だが、魔王を中心として突如発生した暴風が、飛来する物全てを弾き飛ばし、謁見の間の四隅に降り積もらせた。




