第87話 謁見の間の死闘 その2~恐怖!松ぼっくりおっぱいミサイル!~
「しかしこの前もそうだったが、このドレス動きにくい! いらんわ!」
ぶつくさぼやきながらクロスアウした魔王は、前回同様純白のジャンボサイズのブラとパンティを衆目にさらけ出す。規格外のダイナマイトボディから爆風のごとく発する圧が強すぎて、正直目のやり場に困る。
「しかしあの手この手でよくぞやってくれたな、モーラス! ではお礼にこちらから……って、あれれれれーっ!?」
またもや魔王が、醤油と間違えてソースをかけた豆腐を口にした時の顔をしている。彼女の悩殺ミラクルボディから無理矢理視線を引きはがすと、まるでアイドルの早着替えのごとく、モーラスは巨大松ぼっくりの殻の中に閉じこもっていた。
「くそ、弱ったな、どうすれば……だが、どうやってやるんだ、あれ? 便利そうだし我も習得したいな……」
【どう考えても無理でしょうが! それよりも相手が固まっている今のうちに何でもいいからやっちゃってください、魔王! どうせあんなトランスフォームはこけおどしに決まってますって!】
僕は迷っている魔王に発破をかけ、攻撃を促した。さっきからことごとく相手のペースで戦いが進行しているし、ここは一つ格の違いを見せつけて、主導権を握っておくに限る。てか、作戦参謀としては彼女におっぱいだけではないことを証明して欲しい。
「ま、確かに何事もやってみないことには始まらんな。よし、いくぞ、モーラス! 我が真の力の一端を見るがいい!」
魔王はそびえ立つオブジェに対して威嚇すると、再び呪文のための印を結び始めた。心なしか周囲の空気が湿り気を帯び、粘度が増したように感じられる。
「あまねく水流を司る生命の源たるヴァイデックス神よ、その御力、我が指先よりほとばしり出て濁流と化し、金剛の鎧を穿つ矢となりたまえ! マーデュオックス!」
詠唱の終了と共に拳銃のように突き出された彼女の右手の人差し指からすさまじい量の水が噴出し、一直線にモーラスのまとう茶色い樹皮に向かって突き進んでいく。僕はどうなることかと、固唾を呑んで(呑めないけど)見守っていたが、松ぼっくり野郎は別段よける仕草も見せず、縁日の射的の的同様に不動のままだ。
一秒にも満たぬ間に、音速を超えた凶悪極まる水流が松ぼっくりに突き刺さるも、驚くべきことに、厚い実の皮は九牛の一毛ほども傷つく様子もなく、ボンドで貼り付けたようにピタッと閉じたまま、文字通り涼しげに受け流していた。




