第85話 第一回魔王城おっぱい俳句大会 その3
「よし、では第一回魔王城おっぱい俳句大会の優勝者はモーラスとする! 異存ないな!」
「「「はい!」」ガオ!」
魔王の雷鳴のごとき一声により、モーラスを除く四天王たちは皆一斉に平伏する。僕はすごい異存ありまくりだったけど、今の魔王にはおそらく何を言っても右から左なのであえて地蔵というか墓石と化した。相変わらずのワンマン振りだ。
「というわけでモーラスよ、何か望みはあるか? 我に出来ることであれば何なりと遠慮なく申してよいぞ」
「……」
優し気な魔王に対し、表情の読めないモーラスは無言のまま、しばし柳の木のようにその場で髪の毛を揺らめかせていた。彼女をスパイだと疑っている僕は、モーラスからただならぬ気配を感じたような気がして、居ても立っても居られない気分になった。
「デハ、一ツダケオ願イスル、魔王様」
ついにモーラスが口を開いた。何というか風に吹かれた草木が意味もなくざわめいているような、人間味を感じさせない奇妙な声だった。
「よしよし、話してみるがよい」
「小生ト、コノ謁見ノ間デ今カラ全力デ戦ッテホシイ。但シ立会人ヤ見物人ハ抜キデ頼ム。ソコノ白箱ハドウデモイイガ」
「はぁ? そんなことでいいのか? こちらとしてはむしろ願ったり叶ったりだが……」
予想外の要望に、魔王は肩透かしを食らった顔つきだったが、すぐに体勢を立て直すと、僕の方に振り返った。
「いけるな、ムネスケ?」
【ええっ、また軍師役やるんですか!? 相手が何をしてくるのか、全くわかりませんよ!無理ですよ!】
「うるさい、さっき下手くそなパクリ俳句を詠んだ罰だ。なあに、我もモーラスとの試合は初めてだが、今回はこの前と違って魔法を禁止にはしないから、大したことないと思うぞ。大船に乗った気持ちでいるが良い」
【大船よりは大胸の方好きですけどね……って僕までギャグに汚染されている!】
「ハハハ、もうすっかりここの家風に染まってきたようだな。では、我とムネスケとモーラスの他は一旦ここから出るが良い!」
そんなこんなでミレーナたちがゾロゾロと出て行き唯一の扉が閉まった後、魔王はこの前と同様にマントを放り投げると片手を上げながら一歩一歩階段を降りていった。本当に演出好きだな、この人。




