第82話 双丘の城おっぱい
レミッチの公開小作り金粉ショーから早くも三ヶ月の月日が流れた。その間この前のような禁断症状おっぱい揉み揉み暴走事故が一回もなかったのは僥倖だった。僕もこちらの世界の暮らしにだいぶ慣れ、また、こちらの知識の方も加速度的に吸収していった。
例えば、あの満月の夜に見た対岸の城こそが現魔王の住むシン・魔王城で、こちらの城は沖合の離島にある、いわば別荘のようなもので、合わせて双丘城と呼ばれていること(おっぱいかよ!)、二大陸間の戦争は現在もなお膠着状態が続いており、小競り合い程度しか行われていないこと、メディットによると、姿を恒久的に変化させる古代魔法は存在するらしいが、使うには膨大な魔力が必要で、現在の魔王にも無理だとのこと、その魔王の自室の漫画専用本棚の充実度はそこら辺の漫画喫茶よりも素晴らしく、こりゃミレーナが怒るのも無理ないわなということ、などである。
ちなみにミレーナとはようやく口を聞いてもらえるようにまで関係は修復し、そのためもあってか検診を小まめに行っている。まだミミックスライムは入れたままなので暴発事故がちと心配だが。魔王のおっぱいについてはあの日以降一切触れておらず、っていうか触れさせてもらえず、非常に残念である。メディットとモーラスの2人も相変わらず検診拒否組だが、リプルはマリリン・モンロー情報のお礼の意味もあってかたまに診させてくれるため、中継ぎに猫娘四姉妹を挟んでなんとか禁断症状を回避している、といった状況だ。
スパイ案件については未だに調査中だが、あの夜のモーラスと垂れ乳ババアの密会の一件はほぼ完全にクロに近いと僕の中では確信していた。だが、色々と腑に落ちない点はある。何故岩陰とはいえあんな人目につきそうな場所でわざわざやり取りをしていたのか、そもそも何の目的があってスパイ活動をしているのか、などだ。もっとも松ぼっくり風情なんぞの内部事情なんぞ想像するのも困難で、良い肥料でも見返りに貰ったぐらいしか思いつかない。だがこう見えても作戦参謀なので一応仮説はあるのだが……というわけで、この件に関してはまだ誰にも伝えずに伏せてある。
まあ、いつ元の世界に元の身体で戻れるのかわからないので、焦らず気長にやるしかないのだが、満月の日だけは多少身体が自力で動かせるという発見は大きく、生きる上での慰めにもなった。
そしていよいよ今日、この世界に来てから5回目の満月の日が巡ってきたのだが、魔王と四天王各位、そして僕の6名は、何故か朝からおっぱい俳句大会を開催していた。おっぱいおっぱい!




