第77話 おっぱい揉もうと追いかけたんなら謝ろう!
結局、魔王の大きなおっぱいには何一つ異常なかった。
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「しっかしこの前は凄かったガオ、白箱くん! 君はやる時はやるやつだったんだガオ!」
【もうそこら辺で勘弁してくださいよ、メディットさん。しかし精が出ますね】
僕は苦笑いをしながら、話題をすり替えようと努力した。あの悪夢のような、もしくは淫夢のような暴走した日から早一ヶ月、僕はメディットの部屋にお邪魔し、彼女の錬金術の実験を傍らで見学していた。ちなみにあの後僕は城中回ってお詫び行脚をする羽目となったが、皆優しく許してくれた……ミレーナだけは未だに口をきいてくれないが。ぐすん。
嫌なことを忘れようとメディットに目を向けると、「研究者に手袋は必須だガオ」と常に言っている通り黒手袋を嵌めた彼女は何やら怪しげな薬をフラスコで煮込んでいる真っ最中だ。媚薬かなにかか?
「これはただの蒸留水を作っているだけだガオ! 怪しい薬じゃないガオ!」
【そうでしたか、でもなんだってそんな物を大量に?】
まるで僕の心を読んだかのような彼女に、つい疑問をぶつけてみた。もう時間はだいぶ遅く、しんとした城内に湯の煮沸する音だけがコポコポと小さく響く。
「そりゃまあ実験で使う意味もあるけれど、今日はレミッチが子供を作る大切な日だから、身体を清める清潔な真水が必要なんだガオ。この城の井戸水は海のそばのせいもあってかちょっとしょっぱいんだガオ! 水を飲む必要のない白箱くんは知らなかったガオ?」
【そりゃまあ知りませんでしたけれど……子供を作るううううう!?】
思わぬところで思わぬ名前と思わぬ事情が飛び出し、僕はテンパりそうになった。だが、そういえば以前もあの猫娘の長女は確かそんなことを言っていたような……!?
「そろそろこの部屋へ蒸留水を取りに彼女がやってくるガオ。ここは一つ、白箱くんも一緒に子作りの現場見学としゃれこもうじゃないガオ?」
【なななな何言ってんのこのスフィンクス!?】
声が裏返り、リプルのような話し方になってしまうがさもありなん。そんな現場見学していいのかよ!?
「別にそんなに大したことないガオ? ハハーン、さては何か勘違いしているガオ?」
【勘違いも何もないとは思うんですけどねぇ……しかしこの城にも男がいたんですね……】
てっきりここでの男性は自分一人だけかと思っていたので、そこは正直驚いている。今まで一体どこに隠れていたんだろう?
「何を言っているガオ、白箱くん? この城どころか、この世界に男と言うものは一人もいないガオ」
【え……!?】
絶句する僕を他所に、「待たせたニャー!」という声と共に、ノックもせずにドアを開ける音が聞こえた。




