第71話 まとめておっぱいを揉ませろーっ!
「魔王様、ここはひとつボクが食い止めるガオ!」
「よし、任せたぞ!」
「発動! スフィンクスの謎かけガオ!」
魔王が一歩下がるとメディットは両手をバンと合わせて合掌のポーズを取った。途端に巨大なライオンのような獣の顔が彼女の背後いっぱいに広がる。その瞳は燃える炎で、牙は槍の穂先のように鋭く、気弱な者なら目にしただけで回れ右したく代物だったが、あいにくハッスルハッスルワッフルワッフルしている僕には屁のカッパだった。
「くっ、前回はあえて幻獣の姿を見せなかったのに、初見でも恐れないガオ!? まあいいガオ! 飲んでも飲んでも容積が変わらないタンクとはなんぞや!?」
【おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいーっ!】
「グガ! またもや正解だガオ!」
途端に幻獣は出題者のメディットの方を頭から噛み砕く……かのように見えたが、実際にはその歯牙が彼女を貫くことはなく、スルリと通り越した。どうやら幻獣というだけあって実態はないらしい。だが、それでも彼女にダメージを与えたようで、そのまま廊下に崩折れた。ていうかひょっとして毎回おっぱい謎々縛りかよ!?
「だ……だが、もっと正確に言うならば『ミルクタンク』が正解だガオ……それに、時間稼ぎの役割は果たしたガオ……」
「よし、でかしたメディット!」
何やら忍者のように様々な印を結んでいた魔王が、波動拳のポーズでこちらに向かって両手を構えている。彼女は瞑目すると、次の瞬間開眼し、大音量で呪文を詠唱した。
『創造を司る偉大なる神・オレンシアよ。塵芥より泡沫の生を産み出し、仮初めの魂を与えたまえ! モディオダール!』
刹那、大気中に埃のごとく漂う金泥が集まり、金色の靄が生じる。窓から差し込む夕焼けに照らされ黄金と朱色が指数関数的に輝きを増し、目に痛いほどで、さすがの僕も一瞬足が止まる。その隙に靄はどんどん濃くなって、いつぞやの現魔王乱入の時のように、人の姿を取る。それは……
「やあ、久しぶりだな、胸広君。しかし随分トンチキな格好になったものだな」
その涼やかだが凛々しい声。ぬばたまの濡れたような黒髪。セーラー服を突き破らんばかりの胸元。
【能登川先輩!? 何故ここに!?】
懐かしくも甘酸っぱい記憶がよみがえる。と同時に虫の息だった僕の理性が正常値まで一気に回復し、人間の言葉を取り戻した。もっともおっぱい揉め揉め吠えまくる本能はまだまだ体内で荒れ狂っているのだが。




