第68話 つべこべ言わずにおっぱいを揉ませろーっ!
「どどどどうしたんですか白箱さんー!?」
暴走機関車と化した僕と廊下で最初に出くわした不運な人は、予想通りというか案の定というか、不運が似合う水魔ことリプルだった。そろそろ夕食のため食堂に向かう途中だったのだろう。
【うおおおおおおおっぱいを揉ませろおおおおおーっ!】
「いいいいいい嫌ーっ!」
問答無用で襲いかかる僕に対し、当然彼女は絹を裂くような悲鳴を上げると、魚足のゴンズイ針を乱れ打ちしてきた。だがそんなものは金属製の僕のボディには蚊が刺すほどにも効果がなく、全てカンカンカンと跳ね返され、床にパラパラと落下していった。
【効かぬ効かぬ効かぬ効かぬーっ! おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいーっ!】
「びええええええええーっ! ここここ来ないでえええええーっ! だだだだ誰かーっ!」
リプルはクルリと後ろを向くと両翼を水平に広げて矢のような速さで廊下を飛行し、たちまち見えなくなった。僕は心中で舌打ちする。逃がした水魔のおっぱいは大きいってやつですな、っていかん、思考がおっぱい化している!
「リプル様、どうしたんだニャア?」
廊下の脇道からひょいと白い布で後ろ髪を覆った青耳の猫娘メイドが現れた。多分あれは語尾から察するに四姉妹の三女ハイシーとかいうやつだろう。小ぶりな可愛い胸元をしているが、直前までリプルのふるいつきたくなるような巨乳を追いかけ回していた僕にとっては、悪いがそんな雑魚おっぱいはアウトオブ眼中だった。
【そんなちっぱいごときに用はないんじゃボケエエエエエエエーっ!】
「びょええええええーっ!」
あわれハイシーは猪突猛進状態の僕に天井付近まで跳ね飛ばされ、視界の外へと即座に退場する。猫並みの身体能力で無事に着地してくれることを祈ろう。
【おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいは何処だーっ!? 出来れば巨乳以上の爆乳おっぱいーっ!】
暮れなずむ広大な城内を、おっぱいを求めてひたすら彷徨うおっぱいゾンビと化した僕は、驚くべきことにガシガシと階段まで駆け上がっていった。普段だったらとても考えられない機動力だ。そんな僕を真上で待ち構えていたのは、先ほど吹き飛ばした猫娘たちの直属の上司である爆乳褐色メイド長だった。
「いつかはやらかすと思っていましたがついに本性を現しましたね、悍ましき淫獣の白箱め……」
彼女は階上から心底さげすむような氷の視線で僕を睥睨していた。




