第66話 修練場の戦い その21〜魔王のおっぱいが未だに揉めない!〜
(そういえばメディットに任務を与えられてたっけ……)
僕はスパイ探しのミッションについて思索の触手を伸ばす。今まで見ていると、メディットは除外するとして、ミレーナは立会人の癖に融通を利かせるほど魔王への忠義心は強いし、リプルは人が良すぎてとても裏切り者とは思えない。猫娘四姉妹はまだ半分しか会ってないし未知数な点が多いが、一番わからないのがようやく素顔を現したモーラスだ。これから調査を深めるべきはそこら辺だろう。
(それにしても……)
僕は曲者揃いの彼らを束ねる盟主たる魔王に思いを馳せる。なんだかんだ言って、彼女はやはり名君主だ。自分が闘いたいという名目でリプルや僕を巻き込み、各々に自信をつけさせ、また、僕には四天王たちとの交流の機会を与え、溶け込ませた。割と強引なやり方ではあったが、お陰で得るものは多かったと断言出来る。
先輩に何故似ているのかは皆目不明だが、彼女にならこの先ついて行ってもいいと思わせる何かが確かにあった。人はそれを人望と呼ぶのだろう。僕はにわかに訪れてきた気だるさに身を任せながら、参謀として如何にしても彼女をサポート出来るだろうかと考えつつ、夢路へと落ちていった。
※ ※ ※
こうして僕の異世界の魔王城での新たな日々が始まった。なにぶん身体が不自由で、まだまだ不慣れなことが多かったが、魔王やミレーナやメディット、時にリプルや猫娘たちの力も借りて徐々に皆の生活に混ざり合い、彼女たちの相談相手や定期健診を行い、着実にこの世界での居場所を築いていった。
ミレーナは相変わらず無愛想だが、僕の健闘ぶりを評価してか、時に鉄壁のような態度を軟化させる場面もあった。メディットは僕の引き出しに入っていたマンモグラフィーのマニュアルに興味を示し、機能をパワーアップさせてやるなどと言って妙な改造を施すなぞ、マッドサイエンティストぶりを発揮していた。リプルは僕との練習の中で少しずつ滑らかに、時にはつかえずに話せるように変わってきた。猫娘四姉妹は探し物が大得意のため物が無くなった時などすぐに見つけてくれ、助かった。
魔王はそんな僕と彼女たちとの間に神出鬼没の早業で登場し、冷やかしの冷水を浴びせかけるため、僕の突っ込み能力を限界まで引きださざるを得なかった。思わせぶりな仕草はするくせにおっぱいは結局揉ませてくれないという、中々の悪女だったが、って魔王だから悪女で当然か。
僕は次第に元いた世界に戻りたいという気持ちも薄れ、いっそここに定住してもいいかなとチラッと思う時も増えてきた。だが、異世界トラゼンタに来てちょうど一か月後、ついに恐れていたことが起こった。禁断症状が訪れたのだ。




