第61話 修練場の戦い その16〜おっぱい四天王たちのそれぞれの事情3〜
幼い時に両親を亡くして親戚に育てられ、生来極度の人見知りで人前に出ることを恥ずかしがるリプルは、セイレーンの本分である歌うことはおろか話すことすらも苦手なため、同族の間で厄介者扱いされ、あまりにも役立たずのためある時仲間の怒りを買い、一族全員にリンチ決定となったが、すんでのところで海辺に休暇に来ていた魔王に救われた。
魔王曰く、「我も出生時に『不吉の星の元に生まれた呪われた子』などと言われて危うく殺されかけたが、そんな我でも今ではこうやって立派に魔王をやっているのだから、その子も今はまだ半人前でもきっとひとかどの者に育つはずだ。要らぬのであれば我が貰っていくぞ」と半ば奪い去るように強引に城に連れ帰って側近としたとのこと。
リプルはその大恩に報いるため、死にものぐるいで歌の特訓をし、その結果人見知りこそ克服することは出来なかったものの、他の者を圧倒する威力を持つ魅了の舞と歌を身につけ、更にはセイレーンの間ではマスター出来る者がほぼいないとされる勇気の歌を見事修得したということだ。
【はぁ、そんなことがあったんですか……結構大変な人生だったんですね……】
僕はセイレーンの少女の悲しい過去を知り、同情の念にかられた。
「水魔どもは弱肉強食のやからだから厳しいんだガオ。でもまあ、戦い振りを見てわかったと思うけど、いみじくも魔王様の見込んだ通り、今では魔王軍四天王屈指の実力者に成長したんだガオ! ただ、自己肯定感が低いのが玉に瑕なもんで、もう少し自分に自信を持ってくれるといいんだガオ……後、チクニーは程々にするべきガオ……」
【ですよねぇ……はぁ……】
僕ら参謀コンビは気絶したままの本人の前で、失礼だとは思うが深く嘆息した。人の性格を変えるのはたとえ薬を使ったとしても困難だが、成長して経験を積むにつれて良い方向へと変化していくことも非常に多い。彼女が大人しく素直で良い人で、城の皆に好かれているだろうことは、この半日見ているだけでも十分伝わってきたし、もっと自分を出しても良いと思う。魔王軍の作戦参謀としては、今後何か上手いアドバイスが出来ると良いんだが……。
「ていうかいつまで経ってもこのままじゃらちがあかないガオ! いい加減に正気に返るガオ、この役立たずの偽乳!」
「はぅっ!」
痛いところを突かれ、やっとミレーナの瞳に理性の火が宿った。




