第51話 修練場の戦い その6〜チクニー好きな魔王のおっぱいを揉んでみたい!〜
「ハッ!」
リプルの勇ましいかけ声とともに彼女の両の羽根が扇のごとく大きく開かれた。彼女の顔からは笑みが消えて猛禽類の瞳と化し、急に場の空気が一変する。
「今だガオ、リプル!」
背後の軍師の号令一下、翼がはためくと共に強大な風が巻き起こり、怒涛のごとく室内を駆け巡る。松明の炎が引き千切れんばかりに揺らめき、危うく吹き消されそうになった。
【魔王、危ない!】
僕が叫ぶよりも若干早く、リプルの両魚足から再び無数のゴンズイ針がヤマアラシの背中のごとく逆立ったかと見るや否や魔王めがけて飛来する。プロダンサーのタップダンスもかくやという得意の華麗なステップでかわそうとする彼女だったが、疾風に乗った針は先ほどまでとは別物で、桁違いのスピードで標的を捉えていた。
「ぐっ!」
魔王がうめき声を上げる。勢いを増した針は魔王の雪のように白い左腕に深々と突き刺さり、そこ一点だけを朱色に染めていた。
「よしよし、上手くいったガオ! バッチリ作戦成功だガオ! いくら魔王様でも、魔法無しではセイレーンの起こす魔の突風から逃れる術はないガオ!」
メディットは不敵に笑い、あたかも悪の組織の幹部のようだ、って確かにそうだけれど!
【大丈夫ですか!?】
「フッ、こんなもの、我が乳首引っ張りチクニーに比べれば屁でもないわ!」
【なんで皆チクニー好きなんですか!? てか痛いならしないでくださいよそんなオナニー!】
「ちょっと左側が噴火口並みに陥没気味なんだよ! 引っ張れば治るかもしれないだろう!?」
【要りませんよそんな陥没乳頭情報! 確かに陥没乳頭の治療には乳首ピアスを使うそうですけど!】
「何っ、それはまことかムネスケ!?」
「あっちがおバカなチクニー談義をしている間に次だガオ、リプル!」
「はい!」
目論見が見事に当たって図に乗ったメディットがテキパキと采配を振るい、それを受けてリプルが再び力強く返事すると、何故かバレリーナのように右足だけで立ち、空いた左足をこちら側に突きつけてきた。すなわち魚の頭の方を。
【乳首のことはいいから魔王!】
「言われなくてもわかっとるわ!」
魔王は敵の射線から外れようと修練場の隅の方へとダッシュで移動するも、時すでに遅く、リプルの突き出されたゴンズイの口元から水鉄砲のごとく大量の水が放たれ、魔王の身体を直撃した。




