第49話 修練場の戦い その4〜どうしても魔王のおっぱいを揉んでみたい!〜
「別に私の胸の中にあったものではないですが、どうやらペット感覚で持ち歩いているようですね、あの人は」
【なるほど、しかしこれはちょっと厄介な展開ですよ】
「何を言っているのかよく聞こえん! もっと大声で話せ!」
【はいはい】
僕はしばし床に転がっている魔王との意思疎通をあきらめ、隣室からかすかに流れてくる歌声に耳を澄ませる。予想通り例の歌だ。リプルは超音波もかくやという奇声で魔王の耳を一時的にバカにし、その隙にあのハッスルソングを歌ってパワーアップを図ったのだ。なるほど、このやり方ならこちらに効果は波及しないが、あちらだけバフをかけることが可能だ。おそらく歌は魔法にはあたらないだろうし、大したものだ。これもメディットの入れ知恵か?
【これはうかうかしてはいられませんね。こちらも真面目に対策を考えましょう】
「ああ……我も油断しておったわ。ここからは本気で行くぞ、ムネスケ!」
こうして僕はようやく聴力が回復してきた魔王に策を授けることとなった。
「いやー、皆さん、お待たせしたガオ! 十時間以上寝た後みたいにすっげえ気分爽快ガオ! ねっ、リプル?」
「はい! いつでも全力で戦えます!」
数分後、控室から出て来たメディットとリプルは様変わりし、肌はなんかツヤツヤし、活気に満ち溢れているのが嫌でも目についた。おそらくあの歌を聞いて、気力・体力共に充実しているに違いない。悔しいけれど、まずは相手側が一歩リードといったところか。
「むむ……これはちとまずいぞムネスケ。なんか緊張してきたし、ちょっとトイレ行ってこようかな?」
なんかこの魔王試合前に試験会場の受験生みたいなこと言い出したよ!
「悪いけどうんこには行かせないガオ! どうせこっちの呪歌の効果が切れるのを待つつもりだったんガオ?」
「うぐう、さすがメディット! 我が『お腹壊したふりして長便の策』を即座に見破るとは! なんかもう負けそうかも……マジで帰ろうかしら……」
【大丈夫ですって! さっきの作戦通り戦えば絶対に勝てます! 元気出していいところ見せてください!】
珍しく弱気な魔王の背を押すつもりで、僕は精一杯の励ましの言葉をかけた。おっぱいもかかっているし!




