第42話 セイレーンの寝所 その9〜乳管とはおっぱいを流れる川!〜
「ででででも、異常が無いっていいことじゃないんですか?」
服の乱れを直すのもそこそこに、リプルが戸惑い気味に尋ねてくる。
「そうだニャン、めでたしめでたしじゃないかニャン!? 何が問題なんだニャン、このヤブ医者白箱先生!?」
【いや、確かに良いことではあるけれど、一概にはそうとも言えないんだよ。まあ、とりあえず画像で一つ一つ説明するよ】
僕は前回のミレーナの時のように、画面の上にポインターを出現させると自力で滑らせた。
【この闇夜の霧深い丘みたいなものがおっぱいの中を写した画像なんだけど、丘の頂上付近から二本の白い川が流れ出ているでしょう? これが造影によって描出された乳管、つまり母乳を出すための管なんだ】
「「へえ〜」」
二人がおっぱいの神秘に感銘を受ける。
「それにしてもリプル様のニップルは大きく写ってるニャン! デカ乳首だニャン! パフィーニップルニャン!」
「なななななんてこと言うんですか!? ふ・つ・う・で・す!」
【ハハ、まあ乳首が大きかったりすると胸部レントゲン写真でも乳首が白く写って腫瘍などと間違えられることはあるんだけどね】
「すげえニャン! 医学ってエロエロだニャン!」
「そそそそれはちょっと違うと思いますよぉ……」
いかん、話がどんどん明後日の方向に向かって脱線している! 軌道修正せねば!
【乳首談義はさておき、もし血性分泌液の理由が乳管内乳頭腫という腫瘍であれば、中に邪魔物があるわけだから、この川が途中で途切れていたり、または一部で拡張し、その中に黒い影、つまり陰影欠損が認められたりするんだけど……】
「わかったニャン! これはきれいに流れているのでどこも詰まってないってことが言いたいんだニャン!」
【そう、その通りです!】
僕は我が意を得たりとばかりに相槌を打った。リプルも話に何とかついていっている様子で、大きくうなずいている。
【後、予後の悪い乳管癌の場合だと、乳管の壁……つまり川岸がガタガタで不整なことが多いけれど、それも特に見当たらない。というわけで、以上の結果より、血性乳汁分泌を起こす乳管内乳頭腫及び乳管癌という二大疾患の疑いは低いんだけど、じゃあ何が原因かと言われると、残念ながら答えられないんだよ】
ここまで一気呵成に説明して、ようやく僕は一息入れた。




