第32話 錬金術師の部屋にて その9〜次なる四天王のおっぱい相談〜
「あれ、早いガオ! もう君を回収しに来たのガオ?」
【いや、さすがにそれはないでしょう。っていうかあの猫娘絶対ノックなんかしませんよ!】
「……あの……、は、入っても……よ、よ、よろしいで、しょ、しょうか……?」
「あの声はリプルだガオ! ドアに鍵はかかってないから好きに入って来ていいガオ!」
「あ……ありがとう、ご、ござい、ます……」
(リプル……?さっき謁見の間で会った、セイレーンという半人半魚+鳥のことか? 何故ここに?)
突然の来訪者に戸惑う僕を尻目に扉は軽やかに開き、緑色の髪をそよがせて魔王軍四天王の一角ことリプルが魚の両足で器用に歩きながら入室してきた。床はやや濡れているが。
「一体どうしたんだガオ、リプル? こんなところに来るなんて珍しいじゃないガオ!」
「すすすすすみません……!」
リプルは平身低頭して、両羽根で顔を覆った。メディットの何気ない質問に対して挙動不審に陥ってすぐ謝る彼女を見ていると、何故これほどの対人恐怖症なのに四天王にまでなれたのか、嫌でも疑問が湧いてくる。
「じじじじ実はメメメメメディットさんによよよよ用じゃなくて……」
「ははーん、するとさてはそこの白箱くんにご用ガオ?」
「はははははい! メメメメメイドさんにここここここに行けば会えるって聞いて……」
「なるほどなるほど、事情はよーくわかったガオ! こいつは煮るなり焼くなり好きにするガオ!」
そう言うなりメディットはそっと僕に頬を寄せるとまるで愛の言葉をささやくように小さくつぶやいた。
「チャンスだガオ! リプル恐らくおっぱいに関する悩みを抱えていて、君に相談しに来たんだガオ! 早速彼女の部屋まで特攻して一発ドカンと乳揉んでやったついでに根掘り葉掘り手取り足取り乳取り何だかんだやって任務を遂行するガオ!」
【何言ってるのか半分くらいよくわかりませんよ! まあスパイかどうか調査しろってことなんでしょうけど、そもそも僕は自力で移動出来ませんって!】
「その点は問題ないガオ! ボクたち四天王には全員君程度を運ぶ能力くらい備わっているガオ! 安心して乳飲み子のごとく揺られていくがいいガオ!」
【本当ですか? とてもそうは見えないんですが……】
僕の心は言い知れぬ不安でいっぱいになった。




