第30話 錬金術師の部屋にて その7〜宝石とおっぱい〜
【えー、最近僕の世界で行われるようになった風習ですが、赤ちゃんの卒乳記念に、母親が自分の母乳を使って母乳ジュエリーという物を作成してもらうというのがあるんですよ。特別な技術を使って保存処理した母乳を樹脂などと混ぜ合わせて白い真珠色の宝石状に固め、ネックレスやリング、ブローチ、イヤリングなど様々な形態に加工するというものです。じわじわと浸透しているそうですよ】
「そ、そんなことが可能なのガオ!? 異世界恐るべし……!」
名うての母乳マニアモンスターも、僕の想像を絶する説明に度肝を抜かれ、豊かな金髪のてっぺんからライオンの尻尾の先まで興奮に打ち震えている。確かに普通じゃ思いもよらない発想だ。人類はどこまで母乳道を極めるのか、自分も密かに心配になってきた。
【で、どうですか、メディットさん。合格でよろしいですか?】
「文句無しだガオ! 君の母乳知識はおっぱいの先っちょよりも高く、おっぱいの谷間よりも深いガオ!」
【それって褒め言葉なんですか!?】
でも、何はともあれ合格は間違いなさそうなので、ようやく僕は心の中で胸を撫で下ろした。
「では、これにて君を正式にボクのパートナーとして認めるガオ! 異議はないガオ?」
【当然ないです!】
「良かったガオ。今後ともよろしく頼むガオ!」
【こちらこそよろしくお願いします!】
僕は腰を折ってお辞儀は出来ない代わりに出来る限りの声を出して心の底からの挨拶をした。
【じゃあ、疑問にも答えたことですし、約束の履行を求めます!】
「約束? なんかしたガオ?」
【しらばっくれないでくださいよ! 『ついでにボクの貧相な乳をいくらでも揉ませてやるガオ!』ってさっき言ったばかりじゃないですか!?】
「ああ、それのことガオ。すっかり忘れていたガオ。わかったわかった、今準備するガオ」
【出来るだけ早めにしてくださいよ!】
興奮のためか、いつもより口調が荒くなってしまう。でも男の子だから仕方がない!
「じゃあちょっとしばらく後ろを向いていて欲しいガオ!」
【すみませんが自力で動けません!】
「仕方がないなあ、じゃあ目を閉じているガオ!」
【それくらいならなんとか……】
僕は自分のレンズに開閉式の蓋をして、しばしの間待機する。やばい、想像するだけでドキがムネムネしてワクワクが止まらず胸がいっぱいおっぱい! って落ち着け自分!
「よし、もう瞼を開けてもいいガオ!」
【ありがとうございますおっぱい!……ってなんじゃこりゃあああああああああ!】
あまりの衝撃映像に、僕はレンズが故障したのかと疑ってしまった。




