第29話 錬金術師の部屋にて その6〜おっぱいの大権威〜
【さて、僕の世界のイギリスって国の話ですが、『乳房の解剖学的構造について』という本を記し乳房のクーパー靭帯に名を残したアストリー・クーパー医師は、何百という遺体から乳房を切り取り蝋や水銀を注入したり沸騰した湯に入れ皮膚と脂肪を剥がし乳腺を取り出したり母乳でチーズ作る等、そこらのサイコキラーが裸足で逃げ出す乳房マニアで、乳房研究を百年進めるという他に類を見ない偉業を成し遂げ……】
「キャハハハハ、自家製母乳チーズとはすっげえガオ! ボクにも匹敵するおっぱい大好き学者がいたんだガオ!」
【まあ、そういうことですよね……世界って広いですね……】
僕は手を打ち合わせて大爆笑する美獣とは対照的に、やや冷めたコメントをして適当に流した。しかしメディットの興奮を抑えるために代わりにしばらく話していただけなのに、いつの間におっぱいの歴史について講義していたんだろう、自分は……。
「さて、話を元に戻すと、三度の離乳食よりも母乳好きのボクは母乳を入手するたびに儚く劣化していくことを嘆いていたガオ。そこで君の力が必要なんだガオ。天上の神酒よりも貴重な母乳を永遠に美しいままに保存して鑑賞する方法はないものかガオ?」
【錬金術とか関係なくとっても個人的な欲求ですよねそれ!?】
「一生のお願いだガオ! これが出来たら君を我がパートナーとして認めるガオ! ついでにボクの貧相な乳をいくらでも揉ませてやるガオ!」
【何いいいいいいいいい!? 本当ですかああああ!?】
あまりにも破格の報酬を眼前に突きつけられて、僕は喉から手が百本くらい飛び出しそうになった。喉も手もないけれど!
「本当だガオ! 君のその二枚の板に挟んで高速でパカパカしてもいいガオ!」
【それかなり痛そうですよ! でもちょっと考えさせてください……】
「頼むガオ! この通りだガオ!」
【……】
僕は下半身がライオンの美女の土下座という世にも珍しい代物を見下ろしながら、脳内検討会議を開催した。先のクーパー御大のようにおっぱいを蝋や水銀などで標本化する方法はあるが、母乳に関してはどうだろうか……どこかで何かを聞いたような気もするが……
「もし出来たなら宝石でも何でもくれてやるガオ!」
【宝石!?】
僕の記憶検索機構にキーワードが反応して、答えが導き出された。




