第27話 錬金術師の部屋にて その4〜錬金術とおっぱい〜
「ゼイゼイ、あー、疲れたガオ!死ぬかと思ったガオ!」
息を呑むほどのゴージャスな金髪が乱れるのも構わずに、美しき獣は濡れた犬のように首を横に振って汗を飛ばした。意外と運動は苦手な様子だ。
「でもあの難問がよくわかったガオ! 素晴らしいガオ!」
【いや、そりゃわかりますって! 要するに子供の頃は平坦な胸が、成長するに従って丘のように大きく盛り上がり、老人になると垂れ下がってくるってことでしょうが! それにあんなあからさまなヒントを貰ったら誰だって正解しますよ! てか元ネタに謝れ!】
最初は悩んでいたことは棚に上げて、僕はひたすらに突っ込みマシーンと化した。
「悪い悪い、君の実力を見誤っていたガオ。でもちゃんと正答してくれて良かったガオ。実はスフィンクスの謎かけは魔力を帯びていて、答えを間違えると凄まじいペナルティが君を襲ったガオ」
メディットははずむ息を整えながらも、さらっと恐ろしい事実をこぼしやがった。
【何ですかそれ!? 聞いてないよ! 先に言ってくださいよ!】
「だってやる前に話していたら、君絶対しなかったガオ?」
【まあ、確かに……】
「それにこれはテストでもあったんだガオ。君がボクと同レベルの作戦参謀を担うに相応しい人物かどうか、のね」
【なるほど、値踏みされていたってわけですか……じゃあ、合格ってことでいいですか?】
「まだまだこれからガオ、フフフ……」
メディットはあのアルカイックスマイルにも似た微笑みと共に木々の梢を吹き渡る風のような笑い声を漏らした。つくづく天性の魔性を秘めた魔獣だ。
「さて、君は錬金術というものをどんなものだと認識しているガオ?」
【ええっ!?】
突如思ってもいなかった質問が飛んできて、僕は面食らった。だが、よく考えればそれは彼女の本職だ。想定して然るべきだった!
【えっと、確か卑金属を価値のある金に変える技術……っていうのは一般向けな側面に過ぎず、実は賢者の石っていう不老不死を叶える万能薬を創り出すっていうのが真の目的である学問、でしたっけ?】
僕は頭をフル回転して、何とか今まで読んだ小説や漫画などの知識を総動員し、模範解答らしきものをひねり出した。さあ、判定や如何に!?
「惜しいけど違うガオ! 錬金術の真の目的は母乳だガオ!」
【母乳うううううううううう!?】
予想の斜め上過ぎる答えに、僕は車輪を滑らせひっくり返りそうになった。




