第22話 おっぱい大好き獣人メイド その1
【そんなの、魔王は全然悪くありませんよ。信頼していた身内にいきなり裏切られたら、誰だってどうしようもないと思います】
僕は反射的にこう答えていた。なんの打算もなく。
「お、優しいな、ムネスケ。我を慰めてくれるのか?」
顔を上げた魔王が僕の腰だか腹だか辺りにそっと腕を回してくる。うおっ、本当この人いい匂いするな! この世界にもシャンプーとかあるの? てかなんか柔らかいものが僕の胴体に当たっている気がする!
【ま、魔王、ちょっと近すぎますよ! 当たる、当たるってばよ!】
「なんじゃ、あれほど他の女のおっぱいを挟んでいたくせに、触れるのは嫌なのか?」
【そ、そういうわけじゃないですって!】
「フフ、うぶなやつよのう。まあ、あまり刺激を与え過ぎると故障しかねんから、今はこれくらいにしておくとするか、新作戦参謀どの」
【か、からかわないでくださいよ!】
「お二人とも、お楽しみのところ失礼するニャ」
【ニャ!?】
ふと、可愛らしい声のした方に視線を送ると、青い髪の小柄なメイドさんがちょこんと控えていた……頭に猫耳を生やして。
「何の用じゃ、レミッチ!? 今いいところ……じゃなくて大事な作戦会議中であったのに」
魔王がいささか不機嫌そうな声を漏らす。てか1ミリたりとも会議してなかったよね!?
「誠にあいすみませんニャ。正確には魔王様に用件じゃなくってそのもたれかかっている白箱に用件ニャ」
【ぼ、僕に!?】
「爆乳おっぱいの作戦参謀のメディット様が自室でお待ちかねニャ。とっととついてくるニャ」
猫耳メイドはやけに偉そうに僕に指示を出す。なんかこの城こんなやつばっかなんですけど!
【メディットってさっきのアンドロスフィンクスか? でもどうやって行くんだよ! 僕は満足に歩くことすら出来ないんだよ!】
「そのために私も一緒に参ったのです。大変不本意ですが」
広間の影の中からでも現れたのか、気づかぬうちにレミッチとかいうメイドの背後にそびえ立つ偽乳じゃなかったミレーナが、生ゴミでも見るかのような目つきで僕に応対する。てか生ゴミというよりは粗大ゴミか。
【なるほど、そういうことか……】
僕は独り言つ。確かに彼女の桁外れの怪力があれば、動けぬ僕でも余裕で城内を移動可能だろう。
「やれやれ、メディットのやつ、本来ならば我が先約であったのにな。ま、良しとするか。さっさと行ってやるがよい」
魔王は名残惜しそうに僕から身体を引き剥がすと、ひらひらと右手を振った。




