第147話 おっぱい大逆転! その3
最初は憧れの先輩に似ているから気になっていただけだが、異世界に来て右も左もわからぬ僕を手助けして導いてくれる彼女のそばにいるうちに、次第に彼女自身の良さがわかってきた。そして先ほど魔王の告白を聞いて以来、心の中がざわついて、普通でいられなくなった。彼女は自分のために命をかけて敵地に特攻してくれた。その思いに応えなければ男ではない!
【死のシャワーを食らえ魔神! そして戻ってこい魔王!】
『ぐあがああああああああ!』
魔神の断末魔が一段と強くなったかと思うと、魔霧で隠された乳頭部から透明な液体がシャワーのように噴出し、目撃したメディットの瞳が爛々と輝いた。その直後、雄叫びがセミが鳴き止むようにパタッと途絶え、全ての動きが止まった。同時に凄まじい魔力の圧力も消える。よりかかってくる力の抜けきった彼女を支えながら、僕はちょっと心配になってきた。これは、成功なのか?
【起きてください、魔王! 風邪を引きますよ!】
意識不明の魔王に精一杯呼びかけるも、おっぱいをアクリル板にサンドイッチ状態の彼女は指一本動かさず、まるで新鮮な死体のようだ。僕の内部に焦りが生じる。魔神を破壊した余波で彼女のどこかも取り返しのつかないダメージを受けたのだろうか?それとも一時的な失神なのか?全くわからない。
【狸寝入りなんでしょう? ドロップテストは今できないんでとっとと目覚めてください! でないとドロップおっぱいしちゃいますよ!】
ダメだ、死んだようにびくともしない。心なしか顔色も悪い。
【まだ僕はあなたに伝えていないおっぱい知識が山とあるんですよ! 例えば昔の産後の貴婦人は出過ぎる母乳を生まれたての子犬に飲ませたとか、自分の乳首を三時間ごとに刺激して母乳が出るようにならないか実験した、通称ミルクマンなるチクニー男性がいたことや、昔のペルシャでは母乳に殺菌効果があると言われたこことか、イラマチオとは古代ギリシャ語で授乳という意味だということとか……】
「母乳知識ばっかりだガオ! てかもっと教えろガオ!」
「あなたは黙っていなさいメディット! それより魔王様! 起きて!」
「あわわわわわわ……」
うろたえる四天王を横目に僕は呼びかけ続けるけれども、事態は何も好転せず、むしろ刻一刻と悪化していく。一体、どうすれば……!?
【頼むから起きてください、エリキュース!】
つい、勢いで魔王の名前を叫んだとき、奇跡が起きた。
「よ、ようやく名前で呼んでくれたな、ムネスケ……」
魔王が薄っすらと目を開け、弱々しくも僕にささやきかけたのだ。
と、同時に、彼女の手にした乳白色の魔石が音もなく粉々に砕け散った。
※※※
激闘から数時間後、朝日に染められた真・魔王城内で、現魔王のオドメールから驚愕の宣旨が下された。彼女は魔王を引退し、新たな後継者に位を譲ることにしたとの内容だったが、その者の名は……。
次回感動の最終回!おっぱいおっぱい!