第146話 おっぱい大逆転! その2
【実は先日そこのメディットさんが僕の身体をいじって放射線の最大出力を大幅に増強してくれました。おかげで通常のレントゲンを遥かに上回るエックス線を照射出来るようになったのです】
『つまり……どういうことなの!?』
【つまり、僕の発射する放射線によって現在あなたはその身を攻撃されているんですよ】
『!』
魔神の柳眉が上がり、地響きのような震えが起こる。動揺しているのだ。
【あなたは自分の周囲を似た細胞で覆って鎧としましたが、つまり腫瘍のような存在となったのです。だから放射線療法の適応に当たるわけですね】
『放射線療法!?』
【僕の世界で行なわれる腫瘍に対する治療法の一つで、外部から放射線を患部に当てて腫瘍を縮小・治療する方法です。侵襲性がないため便利ですよ】
そう、これぞ僕の隠していた最後の手段だった。普通のマンモグラフィーではレントゲン撮影しか能が無いが、僕はグレードアップされており、紅い満月のデバフ効果も伴い、もしやと思ったのだ。今宵は身体をある程度自力で動かせるが、それは放射能の制御においても同じだった。そして先ほどと異なり油断しきっている魔神にこの予想外の攻撃を避ける猶予はなかったのだ。
『で、でも、どうして私の正確な場所が……!?』
【あなたはミミックスライムさながら自分を周囲の組織に溶け込ませて左乳房内に隠れたつもりでしょうが、そうは問屋が卸しません。ミレーナさんの一件で慣れたため、僕は魔王の診察後、画像を徹底的に再確認し、非常にわずかに違和感を覚える箇所を発見しました。そこにいちかばちかで的を絞ったのです。結果正解だったようですね】
『おおおおおのれえええええ! まさか、まさかマンモグラフィーごときに森羅万象を超越した、この憂いの魔神の私があああああ!』
大きなおっぱいを挟まれたまま豹変した口調で声を荒げる美女には一種の壮絶さがあり、絵になる姿でもあったが、僕は一切の情けをかけず、乳房をひねりつぶす勢いで圧をかけ、致死の光を注ぐ。何故ならこの寄生虫のごとき悪魔に勝って、愛する魔王の身体を取り戻さなければならないから。
(……愛する魔王、か)
そう、僕はいつの間にかこの眼前の身体の真の所有者たる魔王のことを深く愛していた。奔放で自分勝手でワンマンだが、陽気で賢く他人想いな彼女に、心を奪われていた。