第141話 おっぱい大覚醒! その9
「でででででも、自主的に身体から出て行ってもらえば……」
ようやく意識を取り戻したリプルが、弱々しくも精一杯の声で、最強の敵に立ち向かう。
『残念ですがお断りします、チクニー好きの優しいセイレーンさん。私の最終目的はこの身体を使って復讐を成し遂げることですから』
【それはつまり、僕とあなたの故郷である地球を滅ぼすということですか? 隕石でも落とすつもりですか?】
魔神の悲しみの視線は一周して再び僕の元に立ち返る。
『まさにそういう事です、聡明なムネスケさん。その大いなる作戦のために、あなたはこの世界に呼ばれました……私によって』
【ど、どういうことだってばよ!?】
いかん、再び声が裏返ってしまう。
『地球のものをこちらに投射する紅き月の光は、そもそも創造主の私によってある程度の選択性が施されています。例えば生物学的にオスであれば、こちら側へ召喚されることは普通あり得ません。何故ならば私を追放した大罪の魔神たちは皆男性だったからです』
突如魔神が窓の外の満月を指さし説明を始める。僕は黙って聞かざるを得なかったが、興味深い話であるので口は挟まなかった。疑問点はあったが……。
『さて私は魔王ことエリキュースの複製元である能登川美奈藻と、あなたの複製元とが浅からぬ因縁で結ばれていることを知っていました。端的に言えば、二人は心の奥底でお互いを想っていたのです』
【うがああああああ! そうだったのおおおお!? いやーんまいっちんぐ!】
突如、憧れの先輩と両想いの関係だったことを異世界の魔神様に暴露され、僕は発作的に死にたくなった。コングラッチュレーション、地球の俺。元気でやってるかしら?
「おお、そうだったのガオ! 白箱くん、おめでとうガオ!」
「これでおっぱいモンスターもめでたく童貞脱出ですね……」
「よよよよよかったですね白箱さん!」
【うるさいわ! あんたら一斉に拍手なんかしないでヒュンケルとクロコダインみたいに床で寝転がってなさい!】
『よってエリキュースがマンモグラフィーを呼び寄せようとした時、あなたのいる座標を指定するよう私は密かに彼女を操作し、間違ってあなたごと召喚させました。しかし先ほども述べたように紅き月は雄性を嫌います。よってあなたは身体ははじかれましたが、魂のみが機械と一体化して召喚されることになったわけです』
世界は残酷に満ちていた。