第136話 おっぱい大覚醒! その2
「どうしてこんなバカげたことをしでかしたのよ、お姉様!? 大人しく引きこもっていればいいものを、これじゃ幽閉どころじゃすまされないじゃない!」
キンキンと金属音のごとき耳障りな怒声が部屋の方向から響いてくる。おそらく現魔王のオドメールだ。
「すまんな、妹よ。だが、何分緊急事態だったのでな。我がかわいい作戦参謀を闇から救うため、これしか方法がなかったのだ」
捕らえられているはずなのに毅然として余裕に満ちている聞きなれた声が、相手をいなす。魔王なのはまず間違いない。
「だからってここには例の宝玉はないわよ。こんなこともあろうかと厳重に保管してあるんだから!ねぇ、カヌマ?」
「は、かの御物はこのカヌマが責任を持って安全な場所にしまっておりますれば、何人たりとも指一本触れさせません」
オドメールの後に、あの垂れ乳ババアのしわがれ声も続く。どうやら事前情報と違って今夜はオールナイトのようだ。
「フフッ、どこに隠そうが、勝手知ったるなんとやら。城の元支配者たる我には一糸まとわぬ乙女の丸裸も同然よ」
魔王は少しも動揺する気配を見せず、ふてぶてしくも嘲弄する。まったく大した胆力だ。
「何イキがってんのよ、手を縛られて得意の魔法も使えず、何も出来ないじゃないの」
「我がいつたった一人でここへ来たと言った? 我が優秀な手先たちがすでにくまなく探索中よ」
その台詞に離れてやり取りを盗み聞きしていた僕たちは、全員ビクッと身をすくませた。
「ま、まさか……とっくにバレているとでも言うのですか!?」
「そんなはずないガオ! 魔王様とは全然連携プレーしてないガオ!」
「そそそそうですよ……それにこっちは別に宝石の捜索なんてしていませんし……」
【確かにリプルさんの言う通りです。多分僕たちのことを言っているわけではないでしょう】
「でも、それじゃ一体誰が……ハッ!」
僕の言葉を受けて思案するミレーナは、突然魔王たちがいる部屋の隣から物音がしたため考えを一時中断し、拳を握りしめた。
【こ、ここは何の部屋ですか?】
「元々はオドメールの自室だガオ。ちなみに今魔王様たちがいる部屋は、魔王様が自室に使っていたものだけど、どうやらオドメールはそっちに引っ越したようだガオ」
メディットがひそひそ声で教えてくれた。シスコンっぽいしなあ、現魔王……。




