第135話 おっぱい大覚醒! その1
「よし、一刻も早くオドメールの居室に向かいましょう!」
再び僕を鷲掴みにしたミレーナもすぐに察し、縮地の走術でたちまちリプルを風のように追い抜かす。
「待ってくれガオ! 行く前に持ってる母乳を飲ませるガオ!力をつけるガオ!」
メディットがなんかとんでもない妄言をまき散らしていたが、背中越しなので聞かなかったことにした。
※ ※ ※
「しかし城の守備兵が誰もいないとはなっていませんね。全く無用心極まりない……」
「アリンコみたいにウジャウジャいるよりよっぽどマシガオ! てか、おそらく魔王様の討伐に駆り出されてもぬけの殻だったんだガオ!」
小声でミレーナとメディットが言い合いしながらも、夜更けの暗い廊下を突き進んでいく。隠密行動なのでランプ類は使用不可なので、所々に松明が燃えているのと、窓から照らす月光だけが頼りだ。
「ででででもそれならそろそろ皆さん戻ってくるかも……」
「ああ、確かにその通りです。外に出かけていた連中が帰ってくる前にさっさとミッションを済ませましょう」
リプルの不安げな声に後押しされ、皆スピードを三割増しにする。相変わらずお届け荷物のように運ばれる僕に選択肢はなかったが、なんだかすごく気になることがあった。魔王を発見次第即連れ帰るべきか、それともあわよくばいっそこれを機に、このにわかクーデターを敢行すべきなのか? 城に残る敵が少ないのであるなら、首尾よく不意を突いてオドメールとカヌマの二大巨頭さえ抑え込めばひょっとすると成功するかもしれない。
【……】
自分は飛ぶように過ぎ行く階段を背景に、周囲の三人をそれとなく観察する。この三人が力を合わせるのならば、ジャイアントキリングもあるいは……だが、それが可能かどうかは未知数であったし、さっきから何だか嫌な胸騒ぎがした。どうも言葉では上手く言い表せないが、敢えて表現するならば、『誰かの手のひらの上で弄ばれている』といったところだ。これは僕の気のせいだろうか?
「そろそろ部屋が近いガオ!」
幾つ目かの曲がり角を越えたとき、メディットの囁き声で一行の警戒レベルが一気に高まった。僕は考えるのをやめて気を引き締める。とりあえずまずは再会してからだ!