第134話 魔王と再会しておっぱいを揉みたい!
「そんなことはどうでもいいですから早く!」
「そそそそそうですよ!」
「まあ待つんだガオ。これは今日のような紅い満月の夜にのみ特定のキーワードを唱えないと作動しない仕掛けだガオ。ちょうど今夜がその時で良かったガオ!」
急かすギャラリーを尻目に、メディットの右手が鏡の中央部に触れる。コツンと硬質な音が謁見の間に響いた。
「ではいくガオ、バロス!」
「「【うおおおおおおおーっ!?】」」
その瞬間、今まで埃を被ってくすんでいた鏡面が目まぐるしく変わる虹色の輝きを放ち、暗い室内を真昼のごとく明るく照らし出す。あまりのまぶしさにレンズが焼け付くかと思われたほどだったが、光の奔流が一段落すると、なんと鏡の向こうには、こことは違う別の室内が写っていた。ちなみに人影は一人もいない。
「よし、大成功だガオ! では今からいよいよ突入するガオ!白箱くんも魔王様と再会しておっぱいを揉む約束をしているガオ? ボニュー!」
【ちょ、ちょっとまだ心の準備が出来て……】
「そんなものは向こうについてからしてください」
またもや頭部をムンズと掴まれると、僕たちはメディットを先頭にアリスのごとく順に鏡の門を潜り抜ける。まるで水銀の海に飛び込んだかのような感触の後、気がつけば薄暗く大きな玉座の間にいた。今までいた謁見の間とデザインは似たような点が多かったが、どこも破壊されておらず、空間もかなり広かった。
「おおお……四か月ぶりの古巣だガオ! やっと帰って来られたんだガオ!」
「しーっ誰もいないとは言えここは既に敵地の真っただ中、気づかれるわけにはいきませんよ!」
歓喜するメディットの口元を秒でミレーナが塞いで黙らせる。もっとも心なしかミレーナの表情にも嬉しさと懐かしさとが混在していたが。やはり彼女たちにとってはこっちが真のホームグラウンドなのだ。
「いいいい急ぎましょうよ皆さん、早く!」
珍しくリプルが率先して大広間を突っ切って出口にすっ飛んでいく。その声には修練場の戦いの時並みに熱意がこもっていた。
【ま、待ってください! 一体城のどこに行くつもりですかリプルさん!?】
「ままま魔王様の目的はただ一つ……そそそれは宝玉を取り返すことです!」
【そうか!】
僕は謎かけのようなリプルの台詞を聞いて全てを悟った。魔王はカヌマにやられたわけではない。負けたふりをしてわざと捕まったのだ!