第133話 ブラジャーの紐とおっぱい
「ここの貴重な調度品を全とっかえされたら非常に困るので、ボクがわざわざ魔王様に頼んで掃除させなかったんだガオ」
まるで僕の心でも読んだかのようにメディットが説明しながら、ひょいひょいと絨毯が破けて崩れかかった階段をヒョイヒョイと登っていく。言ってる意味がよくわからないが、僕たちもその後を追いかけざるを得なかった。
「ようやくついたガオ! これだガオ!」
廃墟の中をかき分けたどりついた先には、金枠に囲まれた大きな等身大以上の鏡があった。ここに来た初日に生まれ変わった僕の雄姿を写し出して絶望させてくれた忌まわしい奴だ。
【これがどうかしたんですか? まさかこの鏡を交換されたら困るとでも?】
「正解だガオ!」
残念ながら当たりだったようだ。正直粉々に割ってやりたい。
「ほら、ボーっとせずによく見るガオ。何か変な所がないガオ?」
【変って……別に何も変わった点は……ん!?】
メディットに促されて仕方なしに繁々とナルシストさながら鏡面に見入っていた僕は、突如電流でも喰らったかのように閃いた。
【傷が、全くない!】
「これまたビンゴだガオ! さすが白箱くん! この部屋の家具や調度品は大なり小なり戦いの影響を受けているというのに、これはヒビ一つすら入ってないガオ!つまり……」
「魔法の品、というわけですね」
やっと僕をヘッドロックから解放してくれたミレーナが感心したようにつぶやく。
「そうなんだガオ! ボクもあの戦闘の後この部屋を調査して気づいたばかりなんだガオ! 相当周到に隠された古代魔法の類だったので調査に手間取ったけど、解析の結果、これは連絡通路だったことが判明したガオ!」
得意げに見えを切るスフィンクスの顔は、ここぞとばかりにドヤッっていた。
【連絡通路?】
「そうだガオ! こちらとあちらの二つの城を繋げる通路、つまりはブラジャーの両カップを結ぶ紐に当たるわけガオ!」
【ひでえ例えだ!】
僕は何故か以前作業所の見学時につき合わされたブラジャーの紐作りのことを思い出した。あれって厳密に決められた長さで紐を止めないといけないので、何回もダメ出しをくらって心がボキボキに折れたっけ。ってそれは今どうでもいい!