第126話 暴かれたおっぱい その8
「……最低ですね。それで連絡係をモーラスに押し付け、自分は裏で糸を引きのうのうと高みの見物、というわけですか」
ミレーナも事の全ぼうが次第に呑み込めてきた様子で、腕組みしながら蔑視している。
「モーラスが是非協力させてくれって言ったんだガオ! 実は昔あいつの一族を救ってやったことがあるんだガオ。マンドレイク一族はあんな性格が多いから他種族から嫌われていたし、あいつらの住む森を焼き払って畑にしてしまえと、とある地方領主の魔族の女が命令したことがあるんだガオ。だけどマンドレイクたちが反対し立ち向かってきたので、領主は森を流れる川に大量に毒を撒いて病気にさせたんだガオ。そこを母乳を求める旅のボクが通りかかり、原因を究明して治療してやり、ついでにその領主をぶっ倒して人体実験の材料に持ち帰っておっぱいに毒……」
【それ途中からこの前聞いた話だよ! それで死刑にされそうになったのかよ!】
「まあ、そういうわけでモーラスは僕に忠誠を誓ってくれたんだガオ」
「それにしても再雇用のために上司を売るなんて……」
ミレーナがまだまだ渋い顔をして突っ込んでくる。
「さっきも言ったけど、別にあっちに採用されるのなんかどうでもいいけど、ボク自身の命がかかっていたんだガオ! 確かに魔王様にはいろいろ良くしてもらったけど、彼女が呪われし子で、金泥病の原因なのは間違いないんだガオ! だってこの世界の創世神にして絶対神にして憂鬱の魔神たるオレンシアの神官の予言に誤りなんてないんだガオ!」
メディットは半分泣き顔で必死に弁明する。この世界は迷信深いやつが多いとか以前言ってたくせに、彼女自身も結局同類のようだ。しかし……
【オレンシア?】
僕はそれが、以前魔王が呪文で唱えていた古の神の名で、更にいつかの夢で出会った魔女に似た女性が別れ際に名乗った名前であることに思い至った。これは全て偶然なのだろうか?
「それよりも白箱くん、さっきちらっと口にしていたけど、本当にボクを救う手段なんてこの世に存在するガオ?前にも言ったけど、僕は君のことをとても高く評価しているんだガオ! だからその可能性が僅かでもあるのなら賭けてみたいんだガオ! それともあれはとっさの出まかせガオ?」
ミレーナの手先をするりとすり抜け、メディットがすがるような目つきで迫る。僕は腹を決めた。ここから先が真の正念場だ!