第124話 暴かれたおっぱい その6
「もうボクには何の希望も残されていなんだし、病気で苦しみながら死ぬくらいなら、いっそこの場で金泥に戻った方がマシだガオ!」
やけを起こしたメディットは、倒れたままだが松ぼっくりを握りしめる手に力を入れる。彼女をいまだに踏みにじるミレーナも、うかつに手を出せないため、どうすることも出来ず、とまどうばかりだった。
【お願いです、メディットさん! やけを起こさず話を聞いてください! きっとまだ何とかなります!】
「適当なこと言うなガオ! この病気の研究者にして患者たるこのボクが長年研究しても解決できないのに、この世界に来て高々数カ月の君に、何がわかるガオ!?」
興奮状態のメディットは顔を真っ赤にして聞く耳を持たなかった。いっそこれまでと観念した時、救いの女神が降臨した。
「ややややややめてくださーい!」
一同が振り返ると、そこには透け透けネグリジェ姿のリプルが、緑色の筒を剣道の竹刀よろしく両手で握りしめ、こちらに突き出していた。
「遅いですよリプル! もう少しでバラバラになるところでしたよ!」
「すすすすすみません! ひひひひ氷室の中で探すのに手間取ってしまって……」
【リプルさん! やっと持ってきてくれたんだね! あの幻の検体を!】
「そ、それは一体何だガオ?」
研究者としての血が騒いだのか、メディットも一旦休戦的に、僕に向かって問いただす。
【よくぞ聞いてくれました! これは先日赤ちゃんを出産したばかりのレミッチが出した初めての母乳です】
「なななななななんだってガオーっ!? つまり猫型獣人の貴重な貴重な初産婦の初乳なのかガオー!?」
驚愕の余りメディットは顎が落ちそうなくらいあんぐりと口を開ける。しめしめ、獲物はバッチリ餌に食らいついた。
「一体全体どうやって手に入れたガオ!? いくらボクが頼み込んでも首を縦に振らなかったのにガオ!?」
【それはその物騒な物を手放してくれたらいくらでも教えて差し上げますよ。ここで皆で爆死したら、この黄金よりも尊い資料までもが木っ端みじんになってしまいますからね】
「うぐぐ、足元をみおってガオ……何たる悪魔的頭脳だガオ……仕方ないガオ、ボクの完敗だガオ! 負けを認めるガオ!」
長い逡巡の末にようやくメディットは僕の軍門に降った。ビバ母乳!