第120話 暴かれたおっぱい その2
窓枠で切り取られた空には雲が出てきて、満月を一時的に覆い隠す。遥か彼方で何かの爆発音が響いた気がしたが、僕たちは対峙したまま一歩も動かなかった。確認は決着の後だ。
「それだって偶然だガオ! 証拠でもあるのかガオ!? だいたい何故ボクが敬愛する魔王様を殺そうだなんてするガオ!? 動機がないガオ!」
美しき魔獣は自慢の金髪をたてがみのように逆立て、本物の百獣の王のように激昂した。だが僕は、一切手を緩めるつもりはなかった。確かに彼女との関係は概ね良好であったし、今まで色々とこの世界のことを教えてもらった。だが、それとこれとは別問題だ。
【偶然が二度も続けば必然だと思いますけどね。そこまで否定するのであれば仕方がない。ミレーナさん、お願いします!】
僕は無言で後ろに控える偽乳メイド長に向かって叫んだ。
「観念しなさいメディット! 年貢の納め時です!」
おそらく魔王から取り上げた地球の漫画で覚えたであろう言い回しを使いつつ、ミレーナが流れるような手つきでメディットを後ろ手に押さえつけたまま、彼女の両手袋を抜き取り、更に返す刀でなんとドレスをブラジャーごと剥ぎ取った。どうやったんだよあれ!? イリュージョン!
「や、やめるガオオオオオオーッ!」
メディットは身をよじって暴れるも、メイド長は巌のごとくピクリとも動かず拘束を緩めないため、その美しい半獣の姿態をさらけ出すことと相成った。
【ああ……】
普段ならおっぱいを拝めるだけでも眼福で目の盆と正月とクリスマスが同時に来た状態の僕も、想像通りの結末に顔をしかめ、思わず視線を背けそうになった。それほど彼女の乳房は惨い状態だった。元々は美しかったと想像できるおっぱいは両方とも、所々が壊疽したように崩れかけ、黄色い脂肪が芝生の中の荒れた地面のように顔を出し、そこから金色の粉がわずかに零れ落ちていた。
白魚のような両の手も先端が欠けている指先が何本か見られ、左腕の小指や中指などは半分以上消失していた。その部分にもやはり金泥がガの鱗粉のごとくまとわりついていた。