第117話 さよならおっぱい その10
「一体全体どうしてそんな無謀極まることを!? あちらの城には魔王軍の精鋭部隊が警備をしているのですよ! 何があったのか詳らかに吐きなさい!」
【わわわわかったからちょっと落ち着いてくださいミレーナさん! 実はカクカクシカジカで……】
僕は猛り狂って僕を本気でスクラップにしかねないメイド長をなんとか制すと、先ほどの一件を(魔王が全裸だったことは抜かして)かいつまんで説明した。
「そんなに思い詰めておられたんですか、魔王様は……一言私に相談してくださったら良かったのに……まったくあのお方ときたら、一度決めたら猪突猛進でまっしぐらなんだから……ハァ」
【とにかく急いで追いかけましょう、ミレーナさん! 今からならまだ間に合うかもしれません!】
「そうは言ってもあのお方の飛行魔法は相当スピードがありますからね……こちらも空の専門家が必要……って、そうだ、リプルーっ、今すぐ起きてくださーいっ!」
すうっと息を肺活量の限界いっぱいまで大きく吸い込んだミレーナが、死者もびっくりして墓場から飛び出すほどの大音量で呼ばわったため、周囲の石壁や床がビリビリと震え、深夜の城に大地震が発生したかのような衝撃が走った。おかげで発生源のすぐ側にいた僕は卒倒しかけた。
「どどどどどどうしたんですかミミミミミレーナさん!?」
ネグリジェというか、濡れた薄絹を一枚身体にひっかけただけの、ほぼ全裸に近い格好のリプルがシャチ型枕を抱えて飛んできたため、話が格段に早くなった。どうやら居室がたまたまここの近くだったらしい。
「緊急事態発生です! 今から即、本城に向かった魔王様の後を追いかけましょう! 一刻の猶予も有りません! 下手したら内戦勃発ですから! 本当は猫娘たちも連れて行きたいところですがあいにく今夜は一人もみかけないので三人で行きますよ!」
【えっ、ひょっとして僕も一緒に行くんですか!?】
「当り前です! あなたが今回の事情に一番詳しいわけですし、作戦参謀としてあのお方を説得する策を練ってもらいますよ」
【でも、一体どうやって!?】
「なななな何だかよくわかりませんがあああああたしがまたロープで結んで引っ張っていきます! まままま任せてください!」
リプルがどんと何故かシャチの腹を叩く。だが、確かにここは信用しても良さそうだ。
【わかりました! では早速ですがお二人に策を授けます!】
僕はそれぞれの耳元で囁くと、彼女たちは仰天した。