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第11話 こんな夜更けにおっぱいバトルかよ

「む、それもそうだな。ではダブル作戦参謀ということで今回ばかりは見逃してやろう。ではミレーナ、久々に我と特訓だ。修練場で手合わせしろ」


「えっ、こんな夜更けにバトルですか? 眠気覚ましにお茶でも飲んだ方がよくないですか?」


「黙れ偽乳女。さっきの足払いで火がついて全身の血液が熱く燃えたぎり、このパワーを発散しないと到底眠れそうにないのだ。手加減はいらんぞ」


「やれやれ、仕方がないですね。ま、私も正直言ってあの階段落ちはしてやられましたから、意趣返しにお相手しましょう。少しは師匠としての威厳を見せねばいけませんからね」


 ほぼ裸のくせにダークエルフは白い歯を見せにやっと笑う。やけに自信たっぷりだ。


【えっ、ミレーナさんが魔王の先生なんですか?】


「こら、様をつけろとあれほど……」


「よい、彼女は確かに我が師だ。もっとも武術に関しての、だがな。ミレーナは我が配下中最強の武闘家なのだ。あまり怒らせない方がいいぞ」


【な、なるほど……以後気をつけます】


 僕は、機械と化した僕自身を牛乳パックみたいに片手でひょいと持ち上げた彼女の怪力振りを呼び覚まし、内心冷や汗をかいた。くわばらくわばら。


「では明日の朝、皆に紹介するからそれまでごきげんよう、ムネスケ。良い夢を見るのだぞ」


「機械も夢を見ることが出来るんですかねぇ、魔王様……では失礼します」


 そう言い残すと仲が良いんだか悪いんだかよくわからない主従は連れだって階段を下りていき、燃え盛る松明を消すと、広間を突っ切って観葉植物の植えられたいくつかある大きな壺と壺の間を通り、正面にある大きな両開きの扉を開け、夜の闇と同化した通路へと姿を消した。


【はぁ……】


 僕はバタンという扉の閉まる音に紛れてため息を吐く。窓に映る星空だけが照明だ。暗闇の中に放置されると人は余計なことばかり考える。これから自分がどうなってしまうのか皆目わからず、放っておくと不安が身を焼き焦がしそうになるので、なるべくマイナス要素は排除して、明るい思考材料を探すことにした。


【まあ、首尾は上出来ってやつかな……】


 紆余曲折を経たものの、とりあえず異世界に来て初めてのミッションは無事コンプリートし、魔王との間に幾何かの信頼関係を構築することには成功したようだ。極めてギリギリのラインではあるものの。だからおそらく悪いようにはならないはずだ。


 きっと魔王は約束を守り僕が地球に戻る方法や人間と化す手段を模索してくれることだろう。今まで見ていて彼女は人をおちょくるのは好きなようだが根っこの部分では仲間思いの優しい人間(魔族だが)のようだった。だからその人格に賭ける他ない。現状を打破するには彼女しかすがるよすががなく、噂の凄腕錬金術師とやらに活路を見出すしか手がない。かなり問題のある人物のようだが、あまり偏屈でないといいんだけど……。


 そうこうするうちに遠くの方から、「てい!」「やあ!」という裂帛の気合いがかすかに聞こえてきた。言わずと知れたバトル中の二人の雄叫びに違いない。声だけではよくわからないのだが、どうやら一進一退の攻防を繰り広げているようだ。「あまり胸ばかり狙わないでください、魔王様!」「む、すまん。どれくらいの衝撃まで耐えられるのか試してみたくって、つい……」「うがああああああ!」など、不穏な会話が所々で混ざるのだが……。それにしても気心の知れあった関係というものは側から見ていても良いものだ。


【しかし魔王の声って本当にどこかで聞いた気がするんだけど……ああっ!?】


 そこまで独りごちて、僕はついに思い当たった。同時に心は桜の花びらが舞い散るあの春の日の校庭へと立ち戻っていた。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] Xより来ました、朝比奈爽士です。 非常に面白い作品でした。タイトルの時点でかなりインパクトがあったのですが、実際に読んでみると豊胸の歴史やマンモグラフィーについてなどが詳しく説明されており…
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