第103話 謁見の間の死闘 その18~垂れおっぱいでロールユー!〜
「誉メ殺シナラバ無意味ダ。早ク殺セ。デナケレバロクナコトハナイゾ」
甘言に乗るものかと頑ななモーラスだったが、一応会話を継続する意思はありそうだった。
「そう死に急ぐな。正直言ってそなたのような優秀な部下を失いたくない。それに今後食卓に野菜が不足するのも困るのでな。あれってそなたの分身か何かだったのであろう?罪を赦す代わりに、また我を支えてはくれぬか?」
魔王が真摯な(ように見える)態度でモーラスを力強く見つめる。さっきまでリストラのことを考えていたくせに、一体どの口が言うんだと突っ込みそうになるも、相手の機嫌をこれ以上損ねるわけにはいかないので、僕はなんとか言葉を引っ込めた。
「ソレハ無理ナ相談ダナ。アナタガ死ナナイ限リ、小生ハアノ方カラ受ケタ大恩ヲ返スコトガ出来ナイ。小生ノ大切ナ人ノタメニナラヌコトナド不要ダ」
「一体その人とはどこの誰のことなのだ? どうやら垂れ乳ロールユーババアのカヌマではなさそうだが……」
「……」
なおも問いただそうとする魔王だったが、ついにモーラスは固く口を閉ざし、答える気を失った様子だ。
「やれやれ弱ったな。どうしたものか……って、何だ!?」
への字口で頭を悩ませていた魔王が、異変を察知したのか、背後の広大な水たまりを振り返った。何と、とっくに溶解して泥水になったかと思われた残り9体のモーラス全てが合体した巨大なゲル状の何かが、ゾロリゾロリと階段を這い上がり、僕たち3人に今にも襲いかかろうとしていたのだ。
「危ない!」
魔王の後ろにいたミレーナが、目にも留まらぬ早業で接敵すると、凄まじい手数の掌底の乱打をラッシュで浴びせかける。ゾンビモーラスは声なき声を発しながらボロボロと崩れていくも、それでも諦めきれずにまだ行軍を止めようとしない。
「まったく往生際の悪いやつだな……って今度はどうした!?」
またもや魔王が驚愕の叫びを上げる。青息吐息で横たわっていたモーラス本体の姿が見る見るうちに膨らんで、醜く変形していく。
「小生ヲ早ク殺サナケケレバロクナコトハナイト警告シタデアロウ。小生ノ全魔力ヲ今カラ放出シ、爆散スル。コレゾマンドレイクノ最終奥義・死ノ咆哮ダ。特ニソコノ白箱ノ頭脳ハ魔王ガ言ッタ通リ後々脅威ニナリカネン。セメテドチラカダケデモ生命ハ貰ウゾ」
【「ちょっと待てええええ!」】
ほぼ魔力ゼロの魔王とろくに動けない僕は不運を呪った。