第102話 謁見の間の死闘 その17~秘技・おっぱいビンタ!~
「おーい、モーラス! 生きてるか!? 生きてたら返事しろ!」
ベシベシベシッ!
「魔王様、そんなに顔を叩かないでください!」
「うーむ、やはりおっぱいビンタの方が良いかな?」
【(無視して)しかしまったく起きませんね……まさか狸寝入り?】
僕は疑いの眼差しを向ける。魔王とミレーナは松ぼっくりの殻を割ってやっと露出したモーラスの人間体を石の床に横たえると、さっきから様々な手を使って覚醒させようと試みているも、皆徒労に終わった。なんとなくだが生命反応らしきものは感じられるので、死んだわけではなさそうだが……。
「そんなことをして何の得があるっていうんだ?」
【そうですね……例えば今回の件について追及されることを先延ばしにできますし、寝ている間は罰を受けなくても済みます。解離性障害のような一時的な遁走反応かもしれません】
「よくわかりませんけど、それって見抜く方法ってあるんですか?」
未だに艶やかな下着姿のミレーナが聞いてくる。ここは一つ医者らしいところを見せねばならない。何故ってハリポタ部屋を卒業してまともな個室が欲しいからだ!
【寝ている人の方手を持ち上げ、本人の顔の上に持ってきてから落とします。もし本当に来を失っているのであればそのまま顔面に直撃しますが、嘘寝ならば顔を外れるでしょう。これをドロップハンドテストといいます】
「へーっ、さすが物知りですね。では、早速……」
「ソノ必要ハナイ。一応女ナノデ、顔ヲ傷ツケラレタクナイノデナ」
【「「えっ!?」」】
無機質な声に、三人が同時に固まる。ただでさえ白い大根肌が青ざめて幽鬼のようになったモーラスが、腐った魚のようなどんよりとした目つきで僕たちを下から見つめていた。
「ようやく目覚めたか、寝坊助よ。そなたとは話したいことがいろいろあるぞ」
魔王が嗜虐的な笑みを浮かべ、拷問官の顔をする。趣味と仕事は別にして欲しいものだ。
「裏切ッタ理由ナラバ、先ホド述ベタハズダガ? モウ説明スルコトナド何一ツナイ。トットトトドメヲ刺スガヨイ」
対してモーラスの方は全く取り付く島もない様子だ。
「いやいや、そのことはひとまず置いておくとして、実に見事な戦いぶりだった。我が魔力不足だということを朝礼の席で察し、魔法を無駄に多用させてから倒そうとするなど、なかなかどうして、急に思いつくものではないぞ。我も作戦参謀どのがいなければ危ういところであった」
聞いているうちにこっとがこそばゆくなってきた。全く、ここぞというところで人を立てるのが上手い魔王だ。