第101話 謁見の間の死闘 その16~おっぱい神経衰弱したい人は自作しよう!~
【うわああああああああっ! こっちへ飛んできますよ!】
「やけに強引なやり方するなぁ。ひょっとしてさっきの陰口が聞こえていたのか? ところで『陰口を叩く』って言い回しはなんかSMプレイみたいでそそるな」
【心底どうでもいいです! それよりもあれ直撃したら確実に死にますよ!】
「安心しろ、そんなことには絶対ならん。その場で動かずにいるがよい」
【ええっ、逃げなくてもいいんですか!?】
「なぜなら彼女が潜水前に、『各々方、そこから一歩たりとも動かないでください』と警告したからだ。言ったであろう、彼女は投石の腕前も一流だと」
【はぁ……】
そうこうするうちに、水面を突き破って姿を現した松ぼっくりが空中に飛び出すと、放物線を描きながら落下し、雨のような水しぶきを上げながらデンッとちょうど玉座にホールインワンした。
「ああっ、我の大事な覇王の椅子になんてことを! あやつめ、わざと狙いおったな! まあ、これくらいじゃ壊れないくらい相当頑丈だが……」
魔王がヒクヒクと頬を引きつらせ、拳を握りしめる。玉座は重量過多で軋みを上げて訴えるも、ガッチリはまり込んだ松笠はちょっとやそっとじゃ外れそうには見えなかった。
【こ……これ、どうするんですか? いっそこのまま謁見の間のオブジェってことにしちゃいますか?】
「やめてくれ! 我はどこに座るんだよ!? とりあえず、先ほどのように乾かして、中身がポロッと零れ落ちるのを待つほかあるまい」
【でも、魔王はもう、魔法は打ち止め状態なんでしょう? 一体どうやって……】
魔王は肉感的な唇の片側をにんまり上げると、無言でロープがぶら下がったままの高窓を指さした。燦々と降り注ぐ日光の角度が徐々に急勾配となり、昼が近づくことを教えてくれる。僕はハッと気づいた。
【た……太陽の光で!?】
だが、確かにそれしかなさそうだった。
※ ※ ※
「ほう、そちらの世界にはおっぱい神経衰弱なる遊技があるのか?」
【はい、まずグラビア雑誌っていう裸の女性の写真……本物そっくりに描かれた絵のような物がいっぱい載っている本を買い、その写真の右と左のおっぱいを別々に同じ大きさで四角く切り取ります。これを大量に作り、裏返して混ぜ合わせます】
「なんか聞いてるだけで頭が痛くなってくる話ですね……って、そろそろみたいですよ」
「おっ、ついに御開帳か?」
僕と共に、床に座り込みながらバカ話を満喫していた女性二名がにわかに腰を浮かす。正午になろうとする強い陽光を全身に浴びた松ぼっくりの笠が、ようやく少しずつ開き始めたのだ。