32.とあるあたしの行事事情
「美優ちゃ〜ん、今日の撮影ありがとうね〜」
「私子供好きなんで幼稚園児へのインタビューぐらい大丈夫ですよ」
今日の美優ちゃんの撮影は今年入園する幼稚園児達に、簡単なインタビューをする企画でとある幼稚園の入園式を見に行くらしいわ。
本当は別の芸人さんが行く筈だったけど、その人が風邪をひいちゃったみたいで、代わりの人を探していたら美優ちゃんの予定が空いてたから回ってきたらしいわ。
『そういえば、こたろうのところの子供も今ぐらいが入園式だって言ってたかしら?』
まぁ、あたしは今回に至ってはスタッフさんと一緒に撮影風景を眺めてるだけだったり車の中で待機ですけど、子供はあたしみたいな犬に飛びついて来る子もいるし、逆に怖がって逃げる子もいるけど大丈夫なのかしら…?
少なくともあたしが一緒に撮影したことがある子役の子達も、犬好きな子が凄くぐいぐい来たり、逆に犬が怖い子が普段通りの自然な表情が出来なくて撮影が長引いたりしたことがあるから、こういう子供がいる撮影にあたしは来ない方がいい気がするのよ…
『まぁ、あたしは美優ちゃんとセットみたいなものだからかしら?
あら?あの子もこの幼稚園の子かしら?こたろうから聞いた家族構成に似てるわねぇ?』
そう思いながら車の中から外を歩く幼稚園児とその保護者を眺めていると、テレビの人が来てるとか美優ちゃんを知っていたりさらにはファンの人達がいる中、両親と今日の入園式で来たらしい女の子と母親に抱っこされている幼い男の子という、こたろうから前に聞いた家族構成に似た家族を見つけたわ。
まぁ日本には沢山の幼稚園があるからたまたま似た家族構成の人達かもしれませんけど……そう思っていた時に、車の中にいるあたしに気づいた女の子が叫んだ。
「あれ?おかあさん‼︎あのくるまのなかにこたろうがいるよ‼︎」
「あお〜‼︎おあお〜‼︎」
「あらそっくりねぇ〜?でも今日こたろうは家にいるからあの子はただこたろうにそっくりなだけよ?」
『こたろうですって⁈ていうことは…本当にあの家族がこたろうのところの家族…⁈』
本当に凄い偶然ですわねぇ?まぁ夢の中での世界で一心同体で、元々あたし達の中の誰かの夢に残り2匹が入り込んでるみたいな奇跡が起こっておりますし、案外現実世界でも近い場所に住んでるのかもしれませんわ。
『まぁ少なくとも車で1時間ぐらいの距離は離れているみたいですわねぇ…?』
そう思っていると、こたろう家族の父親がその後に言ったまさかな言葉を聞いて、あたしはとても驚いたわ。
「まぁ、こたろうは元々3兄弟の1匹みたいだからもしかしたらこたろうの兄弟かもなぁ?」
『こたろうが3兄弟⁈』
「こたろうってきょうだいいたんだ〜?」
「あぁいるぞ!お父さんがこたろうを引き取った時には1匹は引き取られていたみたいだけどな」
3兄弟…⁈そういえばあの子が例え車の窓越しでも、あたしとこたろうを間違えるぐらいに元の世界でのあたしとこたろうって似てるみたいねぇ…?
そういえばあたしもこたろうも、そしてくーすけも元の世界だと黒柴だって言ってたかしら?あの世界だと黒柴の面影の無い姿だから忘れていましたけど、もしかしてあの世界で3匹で1匹の獣になるのってそういう運命があったのかしら…?
『美優ちゃんに貰われる前の記憶をあんまり覚えていないから知りませんでしたわ…
美優ちゃんを待っている間に少し寝てあの世界に行けたら2匹にもこの事実聞いてみようかしら?』
そうしてあたしは、とっくにあたしのいる車から離れて幼稚園に入って行った家族を横目に、車の中でお昼寝をするのだった。




